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山川冬樹

山川冬樹のここがすごい!

「全身」をアートに変えてしまった男

彼は「全身美術家」「全身音楽家」と言う異名を持つ。男性なのにさらさらした黒い髪の毛が腰まである。鼻が高く、顔立ちが整っており、中性的な印象を受ける。

私が彼を初めて目にしたのは、2014年に行われた札幌国際芸術祭でだった。別名SIAFは、その年初めて行われる試みであった。札幌のあらゆる場所に、アート作品が溢れた。その中で一番印象深かったのが、「彼」であった。決して「彼の作品」ではない。むしろ、「彼が作品」であった。

脳みそじゅくじゅくナイトなど、札幌のアンダーグラウンドイベントが開かれるバー「PROVO」にて、彼のライブが行われた。ライブが始まると、そこには誰もいない。ただ、水の音が聞こえる。どうやら近くの川にいるらしい。そこから段々信号の音が聞こえ、階段の音が聞こえ、彼はやってきた。

上半身裸で、彼は人間とは思えない声を発していた。それは野生的で、ものすごく自然で、懐かしいような気もした。次に、頭にマイクをつけ、ひたすら自分のおでこを叩きまくった。骨伝導が伝わり、それはドラムでも太鼓でもない新しい楽器として音を鳴らす。彼は唸りながら必死に叩き、痛みを耐える。彼の鼓動に合わせて一つの豆電球が光る。確かに彼は生きている。

側から見ると、またこうして文章で見ると異様な光景が浮かぶであろう。しかし私は、感動して涙を堪えられなかった。彼はすごくすごく手の届かない場所にいた。それが美しく、儚い存在になってしまっている現在を考えて、なんとも言えない気持ちになる。

文:ぷん

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