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ヨハネス・フェルメール

ヨハネス・フェルメールのここがすごい!

凄まじい技法と愛

フェルメール。彼が残した絵画は約35点前後と大変少なく、また歴史的な記述もあまり残っていません。
裕福であったこと、親方画家として組合にいたこと、その長だったことなどがわずかに知られていますが、プライベートなことは知られていません。

彼の技法は穏やかで、一見して力強いタッチではありません。
ただ、フェルメールはキャンバスに筆跡や修正の痕跡を一切残さない精密な画風で知られています。
彼が正確さを大変重要に考えていたことは「カメラ・オブ・スクーラ」というカメラの一種を作画に使い、正確な遠近を図っていたことからもわかります。
そしてフェルメールの絵を見ればわかるのですが、彼の絵はとてもとても計算されてできあがっているものです。とてつもなく。

しかし、それがフェルメールの真の凄さではない。
彼の凄さは、その計算を、見ているものに全く感じさせないところにあるのです。
普通の素晴らしい画家というのは計算したものが絵に出るものです。
迫力となって。それを見たものは迫力を感じ、「ああ、これは凄い画家なんだな」と思うのです。

フェルメールは違う。
ただ光のつぶが集まり、空気を描き、絵となって、そこに存在するだけなのです。
空気感と光、フェルメールを見るものはそれを感じるのみです。
普通の人たち、普通の光景、普通の出来事。しかし、劇的なものを描くより、それらを描くことのほうがなんと難しいことか。
フェルメールの「愛」がそうさせたのか、「技法」がそうさせたのかはわかりませんが、私は今述べたことにフェルメールの凄さ、というより、恐ろしさを感じるのです。

文:三洞珠子

写実的!立体的!光をとらえたフェルメール

17世紀にオランダで活躍した画家の「ヨハネス・フェルメール」をご存知でしょうか。レンブラントと同じ時代に活躍した彼の作品は、昔の絵とは思えないような超写実的なスタイルは現代でも多くのファンの心を魅了しています。フェルメールの最大の良さは「光」をとらえた写実的な絵でしょう。真珠の耳飾りの少女がとても有名ですが、彼の生まれた地である「デルフト」の港を描いている「デルフトの眺望」で描かれている水面はまるで写真のように描かれています。17世紀という大昔でありながら他の洋画と一味違ったリアルさを描き出した画法が特定されていない、というのもまたロマンを感じることができるのです。
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さらにフェルメールの代名詞と言えば「フェルメールブルー」と呼ばれている、今もなお鮮やかな青色。フェルメールの作品ではこれまた鮮やかな黄色とともに描かれており、まるで現代のファッションを楽しんでいるようにも見えます。この「フェルメールブルー」はラピスラズリという宝石から作られており、当時としては大変高価なものだったそうです。宝石由来の美しい色味と、鮮やかな服をまとった女性たちの絵は、華やかで目を引くものです。抽象画などの何を書いてあるかよくわからない洋画が苦手と言う方でもフェルメールは写実的で鮮やかなものが多いので抵抗なく見ることができる画家の一人なのではないでしょうか。

文:ねむねむ

日常の美を愛した画家、ヨハネス・フェルメール。

デルフトの町を愛した画家、ヨハネス・フェルメール。ラピスラズリという石を原料とする彼の「青色」には、見る人を惹きつける不思議な魅力があります。この鮮やかでありながらも上品なブルーで彼が描きたかったものとは何だったのでしょう?それはきっと、日常の中にありふれた「幸せ」なのだろうと私は思うのです。
彼のアトリエに差し込む柔らかな光と、その光の下で楽しく笑い合い、時には一人で想いを馳せる人々。フェルメールが描いた絵は、そんな日常の中にあふれる風景を切り取ったもののように思えます。素朴な町並み、窓辺で手紙を読む人、微笑み合う人々、熱心に勉強する人といった何気ない日常の風景。誰の生活の中にも潜んでいるこれらの情景に彼は美を感じていたのではないでしょうか。何より、私が彼の作品に感じる一番の魅力は、「あたたかさ」です。彼が描く絵には、ブルーを除くと、茶色・黒・黄色など、あまり目立つとは言えない色味が多いように感じます。しかし、彼は自然光の動きを細かく捉えることで、それらの色味に自然な明るさを保たせます。そしてもう一つ、彼が描く人々の佇まいにも「あたたかさ」を感じます。被写体となる人々の表情や色の透明感からは、その瞬間を楽しみ、または何かを心待ちにしているような、あたたかい感情が伝わってくるのです。

文:brown

ダリに大絶賛されていたフェルメール

フェルメールは、オランダの画家で、バロック期を代表する存在の一人です。細密に描かれた人物を中心とする物語画や、鮮やかな青の色彩が印象的な風俗画の作品を数多く残し、その特徴的な青の色彩は、フェルメール・ブルーと呼ばれました。そのフェルメールの作品を、シュールレアリスムの画家、ダリが大絶賛していたことは有名なエピソードの一つです。
ダリは、敬愛するフェルメールを、何度も自身の作品のモチーフとして使用しました。また、ダリは自分と他の画家たちにそれぞれ項目ごとに点をつけて評価をしていましたが、フェルメールにはそこでも最高得点で評価をしています。一見、ダリの作品やダリ自身から受ける奇抜で過激なイメージとフェルメールの作品の持つイメージとはかけ離れたもののように思え、ダリのその評価は不思議なもののように思えます。「アトリエで仕事をするフェルメールを10分でも観察することができたら、右腕を切り落としても構わない」と言っていたそうですから、相当なものですよね。
一見かけ離れたもののように見える二人の画家の作品も、作り手にしかわからない、深層部分での共通点が秘められているのかもしれません。ダリはフェルメールの作品に自分の理想像を見つけ、熱烈な賛辞の言葉を送り続けたのでしょう。

文:あやぱみゅ

「フェルメールブルー」と呼ばれる青が美しい作品は見る価値があり

ヨハネス・フェルメールの名を聞いても、ピンとこない人もあるかと思いますが、「真珠の耳飾りの少女」という、ブロンドの青いターバンをした美しい少女が振り向いている肖像画は見たことがある人も多いと思います。

フェルメールは17世紀のオランダの画家で、画風は写実的で、生活のワンシーンを切り取った写真のような作品が特徴的です。

フェルメールは生前語り高い評価を受けていたにも関わらず、ピカソなどに比べると若干マイナーな印象を受けるのは、彼の作品は今でこそ美術館で所蔵されているものもありますが、個人所有の物が多いため、大々的に世に出なかったことが原因のようです。

19世紀に入ってフランス人の美術研究家によって紹介され、写実主義に注目が集まってから、フェルメールは再び注目を集めるようになりました。

しかし、作品に個人所有の物が多いせいか、贋作や作品の盗難が多い作家でもあります。彼の作品とされている絵画は現在世界で37点しかないと言われていますが、実際は隠れた個人所有の未発掘作品があるかもしれず、また盗難された作品で見つかっていないものもあることから、世界のどこかにまだ彼の作品があるかもしれません。

彼の作品を見たことがない人も、「フェルメールブルー」と呼ばれる青が美しい作品は見る価値がありますので、作品展や作品集でぜひ、作品の鑑賞をお勧めします。

文:有紀黎

ヨハネス・フェルメールの作品紹介

光の中に切り取られた日常『画家のアトリエ』

『画家のアトリエ(絵画芸術)』は、ウィーン美術史美術館に収蔵されているフェルメールの代表作です。その名の通り、描かれているのは作業中の画家のアトリエ内部の様子です。
Jan_Vermeer_van_Delft_011

モデルは月桂樹の冠に青い衣装を身に付け、本とトランペットを手に窓から射し込む光を浴びています。歴史の女神を模したその姿を、画家はこちらに背を向けて一心にキャンバスに写しています。

画面左半分に大きく描かれたカーテンは、まるでこの絵を見ている者が捲り上げたようです。
大胆な遠近法の効果で、いつの間にか画面の中に取り込まれたような錯覚をおこしてしまいます。
フェルメールは、この覗き見ているような錯覚を起こさせる構図を好んで描きました。

大きく描かれたカーテンやテーブルクロスに邪魔されて部屋の中の人物はこちらから見られていることに気づいていません。一瞬後には視線を感じて顔をあげるのではないか、と心配してしまうほどに画面の中の人物は無防備に見えます。

この、どこか落ち着かない感覚がクセになってしまうのかもしれません。フェルメールの絵は、見るものを捉えて放さない不思議な力があります。
フェルメールはオランダ、デルフトの出身で生涯をこの町で過ごしました。

当時から画家としての名声は高かったのですが、美術商の仕事もしていたため絵を描く時間は限られていたようです。

当時のオランダはいち早く共和制を取り入れて、市民が貿易や産業の恩恵にあずかり豊かな生活を送っていました。

フェルメールの描く庶民の暮らしからは、当時のオランダの繁栄ぶりが伝わってきます。

文:雪まつり

絵画の歴史は時代と共に『真珠の耳飾りの少女』

ヨハネス・フェルメール。1600年代半ばに活躍したオランダの画家です。
陰影を巧みに使った画風が有名ですが、数少ない肖像画が残されています。

『真珠の耳飾りの少女』
Johannes_Vermeer_(1632-1675)_-_The_Girl_With_The_Pearl_Earring_(1665)

少女がふと振り向いた瞬間をとらえています。
普段、構図に非常に凝る画家としては珍しいほどに単純な画面となっており、この作品のモデルとともに長年の謎とされていました。

謎といえば、この少女の服装も謎です。
鮮やかな青いターバンが印象的ですが、この服装は当時のオランダでは無かったもの。
何を目的に誰を描いたのかと、長年の論争が絶えていません。

そんな中、最近の研究でフェルメールが海外のとある事件を知り、それに胸を痛めて描いたのではないかと言う説が現れました。

当時のオランダは貿易が盛んで、それとともに海外の様々な情報が入ってきた時代でした。
そんな多くの情報の中、一人の少女が死刑宣告されたという事件を耳にしたといいます。
遠い国。風俗も服装も知らない、その情報さえ得る事の出来ない時代。
ただ、文字や口伝えにきいたあまりに悲しい事件。

ある国で美しく育ったある少女は、恐ろしいことに父親から歪んだ欲望を向けられてしまいます。
少女は抵抗のため、父をその手にかけるしかありませんでした。
しかし、当時はどんな理由があろうとも父殺しは大罪。
現代でいう未成年であろうとも、死刑を宣告された―。

フェルメールはこの事件に胸を痛め、鎮魂の想いを込めてこの作品を描いたのではないか…という説が現在の有力な説です。

実際そう考えるならば、この少女の服装が当時のオランダの服装ではない、異国風のものであったこともうなづけます。

絵画の歴史は、常にその時代とともにありました。

この作品も大航海時代を経て貿易が盛んになり、様々な情報が入ってきた時代であったからこそ生まれた作品であったのかもしれません。

文:小椋 恵

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