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佐伯祐三

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佐伯祐三のここがすごい!

心身を消耗しながら独自のパリを見出した、夭折の作家

佐伯祐三が描いたのは、1920年代半ばからおよそ4年間におけるパリの裏町の風景です。1928年の3月に病床につき、そのまま客死しています。
彼の有名なエピソードは、美術学校を出たばかりのころに、巨匠から激しい罵倒を食らったことです。フォーヴィズムの権威ヴラマンクは、「このアカデミック!」と佐伯に強烈な喝を入れたと伝えられています。
それから佐伯の画風は、セザンヌ風の流れるような筆遣いから、フォーヴィズムの荒々しくスピードのある筆致に変わっていきます。思い切りよく厚塗りや線描が施され、建物や看板の物質感が前面に表れるようになります。
佐伯はヴラマンクの他にも、1925年の展覧会においてユトリロの風景画に感銘を受けています。その時期はユトリロ風に落ち着いていて奥行きの出る構図を取りました。
佐伯は若い作家で、筆が安定していたとは言いがたいところがあります。自分の絵に悩み続け、試行錯誤の中で画風や構図はうろうろと変化します。
しかし、それは画家として未成熟だったということを意味するのでしょうか?
ひたすらに創作を続け、作品を残す中で、佐伯はやがてヴラマンクやユトリロから脱却していきます。
彼の描く裏町風景は、息が詰まるような現実の硬質さを示しながら、その場に根ざすモノの力強さと、少しの叙情を滲ませます。そこには、佐伯が獲得したパリの内的なイメージが立ち現れています。

文:瑛士

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