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吉田博

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吉田博のここがすごい!

木版画の伝統を覆した、叙景の魔術師

吉田博は、1876年に福岡の久留米市で生まれた木版画家です。
幼い頃から絵画を描く才能に恵まれており、洋画家である吉田嘉三郎の養子として引き取られました。

二十代の頃は主に水彩画を描いており、海外を転々としながら、デトロイト美術館やボストン美術館で展示を行うなどして、成功をおさめます。しかし、そのころ日本の画壇の中心となっていたのは、『白馬会』の創設者でもある黒田清輝。吉田はその後もあいかわらず、外遊を続けます。

四十代になり、吉田は木版画の制作を始めます。大判の作品も多く、これもまた海外の美術界で成功をおさめます。戦後、吉田の知名度が外国であまりにも高かったため、彼のアトリエには多くの進駐軍が訪問してきました。

『光る海』

吉田博の最大の魅力は、自然あふれる広大なランドスケープの捉え方です。私がはじめて吉田の絵を見た時に衝撃的だったのは、“繊細な色彩”に馴染んだ“大胆な輪郭線”です。独特の立体感が醸し出されており、特に水が描かれている絵は圧巻です。「この人には、水がどんな風に見えているの?」と疑問に思うくらい、叙情的でなだらかで、荒々しい。木版画だということに驚きです。北斎なんかもそうですが、流水の一瞬の美しさを切り取れる人は本当に稀なんです。だって、形ないものですからね。

木版画の可能性を限りなく広げていった吉田博。
もしかしたら実物の風景より美しいのではないかと思えるくらいに美しい山水画を、ぜひ自分の目で堪能してみてください。

文:Spacedog

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