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ヴィクトール・オルタ

ヴィクトール・オルタのここがすごい!

独自の進化を遂げたベルギーのアールヌーボー

19世紀末のヨーロッパを圧巻した美術様式と言えば、言わずと知れたアールヌーボー。
フランスのパリで始まったこの『新しい芸術』は、瞬く間にヨーロッパ中に広がりました。
しかし、広大なヨーロッパ大陸のこと。
伝播の途中で微妙に姿を変えて伝わって行きました。
パリでのアールヌーボーが植物のつたが主要モチーフであったのに対し、ベルギーではより抽象化された曲線が多用されました。
その特徴を残すのが、ベルギーのオルタ美術館。
ヴィクトール・オルタはベルギーの建築家で数多くのベルギー調アールヌーボー様式の建築を手掛けました。
残念ながらその中には取り壊され、現在は写真のみが残されるのみとなっているものも多数あります。
そんな中、オルタの自宅は、美術館として当時のままで残されているのです。
中に入れば、階段の手すりからドアノブ、燭台に至るまで全てが優美な曲線で作られています。
家具もオルタ自身がデザインしたもので、机や長椅子までもがアールヌーボー様式。
それも、余分なものをそぎ落とした抽象的な曲線ばかりです。
なぜオルタが、このような独自のアールヌーボー様式にたどり着いたのかは、実のところ謎です。
建築史を学ぶうちにフランスの中世建築の修復理論に影響を受けたのではないかとも言われていますが、はっきりとしたことは分かっていないのです。
とにかくオルタはある日突然、ベルギーの街に独自の曲線を用いた住宅を建てました。(タッセル邸)
それも、非常に円熟した形で。
ベルギーの人々は驚きと称賛の目でその住宅を見つめます。
そして次々とオルタへ建築を依頼しました。
中には、デパートも。(現存はしていません)
残っている住宅のほとんどが個人邸なため、中を見学するのは難しいかと思います。
しかし、外観だけでも十分に見ごたえがあるでしょう。
中には、オルタによるフレスコ画が残されているところも。
もし可能なら、ベルギーを歩き、アールヌーボーを堪能するのも素敵でしょう。
そして、オルタ美術館でしっかりと内装を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
オートメーション化に反発し、手作りの美しさを身近に置きたがった当時の人々の気持ちが伝わってくるかもしれません。

文:小椋 恵

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