グスタフ・クリムトはここがすごい!
世紀末という時代背景から、「性」や「死」になどを表現する内面的で退廃的なアート
クリムトの作品を目の前にすると、多くの人はこのように感じるのではないでしょうか。
(華やかでキレイな絵だなぁ)→(良く見るとなんかエロい絵だなぁ)→(もっと良く見ると何か怖いぞ、この絵?!)という風に。クリムトの作品にこのようなたくさんの要素が込められているのは、彼の生きた時代と、影響を受けた美術に大きく関係しています。
クリムトが活躍したのは19世紀末から20世紀初期のウィーンでした。当時どのような時代背景かというと、「世紀末」という言葉に象徴されます。我々も20世紀から21世紀への移り変わりを経験しましたが、このように科学が進歩した現代ですら、世紀が変わるというのは何かしら大きな興奮と同時に不安も覚えませんでしたか?それは19世紀末を生きた彼らも同じでした。
不安というのはしばしば人間を内向的にしたり、現実逃避させたりするもので、ヨーロッパではそれまで目の前に存在するモチーフに目を向けていた印象主義とは別の動きが生まれます。それが19世紀中頃〜末にかけて、人間の内面性や幻想的な神秘的題材などを表現する象徴主義でした。また、クリムトの活躍と同時代に、美術界とデザイン界にとって歴史的な運動となるアールヌーヴォーも起こっています。
クリムトはそれらの影響を大きく受けながら、絵画におけるデザイン的要素を切り開いたと言われるウィーン分離派を結成しています。クリムトの代表的な絵画には、写実的な人体と、まるでデザインされた模様のような平面的な要素が混在します。それらは多くの具象画に見られる奥行きや遠近感を持たず、観る者に不思議な感覚を覚えさせます。こういった彼の作品は、「風景画」「肖像画」「抽象画」などというように一言で言い表せないのが魅力であり、その後現在まで続く美術の革新や多様性を予感させているのです。
クリムトに影響を与えたのはそれまでのヨーロッパ美術だけではなく、実は我々にとっても身近なものから影響を受けたと言われています。それが、桃山時代に花開き、江戸時代まで続いた日本美術の「琳派」です。美術史に詳しくない人でも、尾形光琳の「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」は美術の教科書などで必ず一度は目にしたことがあるでしょう。クリムトの特徴である、金色を多用した色彩、様式美すら感じさせる構図や画面内の人々のポーズや、装飾的で余白を効果的に使う作風などに、ジャポニズム様式への強い関心が感じられます。
最初にも触れましたがクリムトが活躍した時代には、世紀末という時代背景から、「性」や「死」になどを表現する内面的で退廃的な要素を含んだ美術作品が多く出現しました。クリムトの作品も、男女の愛や性行為を連想させる官能的な表現が有名です。むしろ露骨ではなく連想にとどめるぐらいの表現で描いたことが、余計に観る側の想像をかきたてるのには効果的なのかもしれません。
一見、その明るい色彩と官能的な表現が印象的ではありますが、死や滅びを連想させる不吉なモチーフが同時に描かれていることが多く、装飾美に終わらないその象徴的な作風が人気を呼びました。しかしやがてその人気に翳りが見えた時には、それまでの色彩や装飾的な作風を捨て、新たな表現への研究を怠らなかったといいます。
実はクリムトの生前写真は残っています。見たことのない人はインターネットなどで検索すると簡単に見ることが出来ます。その華やかで優美な作品からはまず想像できない風貌に驚くかもしれません。クリムトは多くの女性をモデルに描き、子どもをもうけるまでの親密な関係を築きながらも、生涯結婚することはありませんでした。
文:柑橘温泉
若い女性にも人気 グスタフ・クリムトの魅力
グスタフ・クリムトは帝政オーストリアの画家で、有名な作品では「接吻」などがあります。
彼の作品は非常に装飾的できらびやかで、また官能的でエロスを含んでいます。
しかしその一方で「死」を感じる描写も多く、その両面をもった作品が彼の魅力と言えます。
作品には金箔を多く用い、華やかで女性的な美しい作品に仕上げています。
彼の画家人生の中で金箔を多く用いて作品を制作していた時代を「黄金の時代」と言っています。
代表作の「接吻」などは、現代でも大変人気があり、また若い女性にも非常に受けが良いため、様々なグッズ(スマホケースやファイルの表紙等)にも
彼の作品が印刷され、未だに多くの人に愛されています。
彼の作品の魅了はきらびやかな画面作りだけではなく、艶かしいほどの人物デッサンにもあります。
背景や洋服の柄等を平面的で装飾的に描く事が多いのですが、一方で人物の輪郭線や肌の質感等は実にリアルで、
そのギャップがよりいっそう作品の魅力を引き出しています。
若い女性から子供、また年老いた老婆まで様々な人物を作品の中に登場させ、生と死をとことん追求しリアルに描き上げる事こそが、彼の作品の真骨頂です。
一見するとお洒落で可愛い作品なのですが、作品に込められた思いは想像以上に深く重い物である事が分かった時に、作品の魅力がより一層感じられるでしょう。
文:ゆずこ
女性を通して生と死を表現した作家
クリムトの作品には、女性をモチーフにしたものが数多くあります。その作品に描かれている女性のほとんどが裸体であったり、官能的要素を含んでいたり、あるいは妊婦であったりしました。当時の帝政オーストリアにおいて、官能的な表現方法や、妊婦を描くことは、タブーとされていたので、クリムトは非常に革新的な作家であったと言えます。女性の裸体を官能的に描く事によって、生きることの美しさと、その中にも死への物悲しさを表現しています。官能的で生々しい表現方法と、美しい色彩で描かれた風景とが溶け合っているような独特のタッチの作品は、現在でも多くのファンの心を捉えて離しません。
神話の中の女神や、ファム・ファタルなど、女性に対する理想や幻想も、クリムトの作品の中にはモチーフとして多く扱われています。豊かな色彩と、神秘的な雰囲気が特徴的な作品ですが、そのどれもが、どこか物悲しさが漂う不思議な魅力を放っています。クリムト自身も数多くの女性との関係があったとされる人物であるので、女性を描くことによって、自分自身の表現したいもの全てを投影させていたのかもしれません。クリムトは、官能的で美しい女性を描くことによって、生と死の全てを表現した作家であると思います。
文:あやぱみゅ
金箔の華やかさの中で抑制されたエロス
グスタフ・クリムトは19世紀末から20世紀初頭にオーストリアで活躍した画家です。有名なのは、例えば「接吻」という絵画、こちら側に後頭部を向けた男性がうっとりした表情の女性に口づけているのですが、花の咲いた草原にひざまずく二人の体は、金箔を使って表現された衣装で溶け合うようにくっついており、エロスと共に装飾的な美しさが感じられます。
聖書にある、攻めてきた敵の王の首を取った女性を題材にした「ユディト」ではうっとりとした表情の上半身を露出した女の姿が描かれ、あたかもこの殺人に官能的な喜びを感じているかのような印象を与えます。ここでは、同じ題材を描いた他の画家の作品とは全く別の解釈が行われていることがわかります。クリムトの作品はこのような官能的な女性の表情が一つの魅力であると同時に、金箔を多用した華やかな画面が特徴です。日本の琳派に影響を受けたといわれていますが、日本のそれとは違い、クリムトの金箔は官能の輝きを表すとともに、画面全体に抑制を与えています。人物の肉体や表情は生々しく、エロスを感じさせますが、それを金箔の背景で囲むことで、全体が現実味を失い、物語の中の出来事であるかのようなイメージを作ります。見る人はエロスを安心して受け取ることができる、そこがクリムトの一つの魅力と言えるでしょう。
文:なおたか
目で感じる贅沢、クリムトの絵画
クリムトは1862年、ウィーン郊外バウムガルテンに生まれた。画家として有名になる以前は劇場装飾を中心とした仕事をしていました。クリムトの絵画でとくに有名な絵画、『接吻』は日本でもデザインやモチーフとなっていることが多い作品だと思います。1度は見たことがあるのではないでしょうか。クリムトの絵画はなんといっても金箔などを使用した華やかな画面、鮮やかな色彩が独特で豊かであり見ているものをなんとも贅沢で満たされた気持ちにさせられます。
長年ファム・ファタールをテーマに、女性をモチーフとした絵画を数多く描いています。またほのかに物語る死や人間のおぞましさや弱さ、そんな部分を独自の構図や色彩で表現しています。装飾の仕事をしていたということもあり、絵画的表現はもちろんのこと、デザイン性に関しても十分にあり、今現在のデザインにも通ずるカリスマ的な装飾的な絵柄も特徴的です。複雑な描写や模様、金箔にまとわれた煌びやかに画面のなかにぼんやりと佇む女性や人物の形、肌の色、シンプルながら人体を描く独特のデフォルメされた美しと構図の取り方はクリムトの人間に対する考え方、世界に対する思いが後世にも残っている理由であると思います。
文:はち
グスタフ・クリムトの作品紹介
「ユディト I」クリムトの描く美しい女性像
クリムトの代表作の一つ「ユディト I」
旧約外典のユディト記に記された美しい女ユディトの姿です。
特徴的なのは英雄的で強さを表す女性像ではなく、薄く開いた口元と挑発的な視線、衣服から透ける裸体は妖艶さを感じ取れます。
また写真では分かり辛いのですが、実物は驚くほどのタッチの細かさと多数の色彩によってユディトを描いており、女性の美しさと神秘性は見る者を圧倒させます。
この作品のほかにも女性の美しさや老い、そして死を暗示するような作品を残しており、見所が多い画家であることは間違いないでしょう。
文:sugiya
恋人と過ごす幸せな時間に描かれた現代芸術のカテドラル「樹々の下の薔薇」
無数の細かいタッチによって描かれた風景画。明るい日差しが感じられる鮮やかな緑。木にはオレンジの実がなり、木の下には白やピンクのバラ。印象派の作品のようですが、グスタフ・クリムトの作品なんです。クリムトといえば、黄金色の豪華で装飾的な女性像のイメージが強いので、少し意外ですよね。
この作品「樹々の下の薔薇」は、クリムトが避暑に訪れたオーストリアのアッター湖畔で描かれました。
クリムトは、1892年より毎夏をこの地で過ごしていました。クリムトの恋人エミリー・フレーゲの別荘がこの地にあったのです。
美しい自然に囲まれ、恋人と過ごす夏。そんな幸せな時間だからこそ、優しく穏やかな作品が描けたのかもしれませんね。
クリムトは、1900年ごろから新たな表現を求めて試行錯誤していました。その中で、地平線を高い位置に置き、画面全体を細かなタッチで埋めつくす独自の表現方法を生み出しました。この「樹々の下の薔薇」は制作時期が不明なのですが、そうした表現が見られるため、1905年ごろに描かれたのではないかと想像されています。
色鮮やかなタッチで埋め尽くされた画面は、まるでタペストリーのようです。主題であるバラも、背景の木々や草むらも、装飾的に表現されています。詩人ペーター・アルデンベルフはこの作品を「現代芸術のカテドラル(大聖堂)」と賞しました。
文:sophia
クリムトのダナエは魅惑的で非常に美しい作品です。
全裸の女性が目を瞑りながら横たわっているように見えるクリムトのダナエを初めて本で見た時、他の絵画には無い魅力をすぐに直感で感じました。この直感はどこからきているのか最初は自分でもよく分かりませんでした。よく分からなかったのですが、この「ダナエ」が自分と同じく多くの人を魅了したのだろうなという事はすぐに分かりました。それほどのパワーをこの絵からは感じる事ができます。
このクリムトの「ダナエ」は1907年から約1年かけてオーストリアの偉大な画家であるグスタフ・クリムトによって描かれました。テーマはギリシャ神話に出て来るダナエです。現在はウィーンのギャラリーで保存されてます。
解説を見てみると、ダナエの足の間にある黄金で流れているものはギリシャ神話のゼウスが姿を変えたもので、周りが四角いもので覆われているのは幽閉されていることを示しているそうです。幽閉されているダナエを愛していたゼウスは、どうしても彼女に逢いたくて姿を変えてあらわれます。
ゼウスほどの神様にこれほど愛されているこのダナエは、閉されているとはいえ何て幸せなのだろうと私は思います。この幸福感がダナエから感じられるのが私がこの絵に直感で惹かれた理由だと後で分かりました。官能的で魅惑的なこの「ダナエ」が私は大好きです。
文:るるるるん
クリムトの「接吻」は、見ていると切なくなる絵画です。
クリムトの絵画の中で一番と言っても過言ではないほど有名な作品が「接吻」です。この絵画には、接吻をしている男性と接吻をされている幸せそうな女性の二人が描かれています。ですが、どことなく切なさも感じさせており、この後の二人はこれからどうなるんだろうと続きの物語がとても気になる絵画です。
「接吻」で女性に接吻をしている男性は、クリムト自身だと言われています。そして、幸の絶頂にあるという表情をしている女性は、クリムトの一番の愛人と言われたエミーリエ・フレーゲの可能性が高いです。この絵画に描かれているのがこの二人なら、この絵画は男性の死で終わり、女性は死ぬまで独身を貫くという悲劇で終わるという事になってしまいます。
絵画のいいところは、自分で好きなストーリーを色々と想像する事ができる事だと思います。ですので「接吻」の二人がこれからどうなるのかを想像するのは自由です。確かに、この絵画はこれからの悲劇が容易に想像できるように描かれています。ですが、それをそのまま受け止めるのか、この二人はその悲劇を乗り越えてハッピーエンドを迎える事ができたと思うのかを決めるのは自分自身です。私は幸せになって欲しいと思うので、現実とは違う、幸せな道を歩む事ができた二人を想像しています。印象に残る、大好きな絵画です。
文:るるるるん
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