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ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ

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ミケランジェロ・メリジ・ダ・カラヴァッジオのここがすごい!

権力に抵抗する画家、カラヴァッジオ

バロック絵画の名手の一人、カラヴァッジオ。この時代の画家はファーストネームで呼ばれる事が多々ありますが、稀代の芸術家にあやかってつけられた名前ミケランジェロは、あまりにも大家な為、カラヴァッジオの方が定着してしまったというエピソードがあります。

あまり知られていませんが、フェルメールやジョルジュ・ド・ラ・トゥールに次ぐほど寡作な上、散逸しています。が、しかし、一枚のカラヴァッジオのために足を運びたい、そんな気にさせる魅力が彼の絵にはあります。

カラヴァッジオが好んだ描き方に、暗くしたアトリエを蝋燭の光りで照らし描くと言う方法があります。陰影のはっきりと出るこの技法・画風はカラヴァッジオスキと呼ばれ、バロック後期やその後にも引き継がれています、その筆頭がジョルジュ・ド・ラ・トゥール。フェルメールがあくまでも自然光にこだわっていたのに対し、カラヴァッジオはその逆の火の人工の光にこだわって描いています。教会に置かれた絵の場合、明かりはだいたい蝋燭なので、教会と言う建物の中の光りと絵の中の光りが、人物を照らしているように見えます(例:「ロレートの聖母」)。

また、彼の魅力の一つに、その筆の正直さがあります。病中バッカスに扮した自画像は顔色が悪いと指摘され、バチカンに所蔵されている「十字架降下」は依頼された教会から、イエス・キリストをあまりにも死体らしく描いたために返品、ルーブル所蔵の「マリアの死」はモデルにした女の素足の汚れをそのまま描いたら「けしからん!」と難癖をつけられたりしています。
けしからん!と言いたくなる気持ちもよく分かるんです。宗教画にしてはいささか艶めかしいので教会に置くには少々目に毒だったかもしれません。カラヴァッジオからしたら、艶めかしいものを艶めかしく描いて何が悪いと思ったかもしれません。そんな、まだ教会からの依頼やパトロン頼みで画家が自由に描くことのかなわなかった時代に、あえて挑戦してくるカラヴァッジオの作品はたまらなく魅力的です。

文:クロエ

無頼の天才画家カラバッジョ

カラバッジョは17世紀に劇的な光と影のコントラストで宗教画を描き絵画に革命を起こしました。
13歳で画家を志し、21歳で単身ローマへ向かいます。
ローマについてすぐの頃は絵画を売りながらの路上生活だったようですが、すぐに注文の途絶えることのない売れっ子作家へとなります。
「病めるバッカス」や「トランプ詐欺師」などで名声を高めていましたが公でのデビュー作は「聖マタイの召命」です。
圧倒的な写実力とリアリティ、そして光と影の演出で見るものに衝撃をあたえました。
カラバッジョ以前の宗教画においては光は柔らかく降りそそぐものでした。
しかし、カラバッジョの作品においては強烈な光が強い影を生み出し、宗教画に劇的なインパクトをもたせます。
カラバッジョは画家としての才能こそ素晴らしく金銭にも困ることはなかったようですが、実生活においては波乱に満ちています。
生来の粗暴な性格が災いし日常的に揉め事を起こして、ついには殺人を犯しイタリア全土を逃亡する身となってしまいます。
そして最後は逃亡生活の中で熱病に冒されてなくなったとされています。
カラバッジョは無頼の画家でしたがバロック美術の形成に大きな影響をあたえました。
それらが再度評価されるようになったのは20世紀に入ってからです。

文:河津リュウ

カラヴァッジョは優れた作品を描きましたが、気性の激しい性格だったそうです。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョは、1571年にイタリアで生まれた画家です。光と影を駆使し、さらに写真のように正確に描くその技法はバロック絵画として後世様々な芸術家に多大な影響を与えました。「キリストの埋葬」や「ゴリアテの首を持つダビデ」等美術が好きな方で彼の作品を見た事がないという方はまずいないでしょう。そして一生に一度は彼の美しい絵画を生で見てみたいと思わせずにはいられない画家です。彼は非常にドラマチックな人生を歩み、彼をモデルとした映画やテレビ、バレエ等がいくつか制作されています。

カラヴァッジョはミラノで修行をし、その卓越した技術を磨いてきました。そして当時はちょうど多くの教会が建てられていた時期で、その教会内に宗教画を描く画家が求められてきました。そしてカラヴァッジョは1600年に枢機卿直々の依頼に応え、光と影を駆使して描かれた傑作「聖マタイの召命」を書き上げ、一躍時の人になります。この時カラヴァッジョは30代になろうとしていたところで、これからさらに活躍するという時に殺人罪を犯してしまいローマを逃げ出す事になってしまいます。さらに乱闘騒ぎの傷等が原因で38歳という若さで亡くなってしまいます。優れた作品を数多く描きましたが、あまりに悪名高すぎてしばらく彼の存在は忘れ去られてしまったそうです。また脚光を浴びたのは20世紀になってからとかなり先の話で、せっかく優れた作品をたくさん描いていたのになんて勿体無いんだろうと思ったのは私だけではないと思います。

文:るるるるん

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオの作品紹介

カラヴァッジョが描いた聖トマスとイエス

聖トマスの懐疑

1590年の後半に描かれた聖トマスの懐疑は、聖書に記されているイエス・キリストの話に基づいて描かれています。この時期カラヴァッジョは他の聖人も描きたくさんの作品を残しています。

聖トマスの絵がとても魅力的な点はいくつかあります。十字架にかかり死んだはずのイエスが、予言された通り復活し弟子の前に現れるというこの話。聖トマスだけはこの事実を受け入れられず、キリストが十字架で受けた傷を手で触れないと信じることはできないと宣言したのです。

このテーマを扱ったカラヴァッジョは聖トマスの心境を上手に描写しました。少なくともこの絵を見た人は聖トマスと共にイエスの横に一緒に立ち、目の前で繰り広げられる光景を眺めているような気持ちになります。イエスが疑い深い彼の手を握り、自分の傷に触れるように導いている姿が描かれています。

光と闇のコントラストの中で、このストーリーは静かに展開しています。イエスの復活の事実に何も疑いをかけなかった他の弟子達ももさりげなく後ろから聖トマスの様子を見ているようで、他人事ではなかったようです。
カラヴァッジョはこの人間の本質のようなものを聖トマスと弟子たちに忠実に反映させているのではないでしょうか。

「見えないことを信じることの難しさ」を静かに描くカラヴァッジョの姿は、激しい性格の持ち主だったと知られる彼の落ち着いた、静かな一面をとらえているように感じます。

文:ラブリー

「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」は、美しさと残酷さが合わさった傑作です

ホロフェルネスの首を斬るユーディット
ホロフェルネスの首を斬るユーディット

カラヴァッジオ作の「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」を見て驚かない人はいないでしょう。白い服を来た非常に美しい女性が自ら男性の首を斬っているのですから。

ユーディットは、旧約聖書外典に出てくる女性です。未亡人で、その信仰心から周囲の人からそれは尊敬されていたそうです。さらに、このユーディットは非常に勇敢で知的な女傑でもありました。その恐ろしいほどの美貌と優れた話術で敵対勢力の将軍、ホロフェルネスに寝返ったと見せかけ、油断させ、その首を自らの手で切断します。横にいる女性は侍女で、彼の首を入れるための袋を持っています。用意周到なところがまた恐ろしいです。そして、将軍ホロフェルネスを失った敵対勢力は敗北します。この後、ユーディットは105歳まで穏やかに暮らしたと言われています。この大胆な作戦はユーディット自身が立てたと言われており、その胆力に驚かされます。

この作品は、首を斬るまさにそのシーンが生々しく描かれています。ホロフェルネスの最後の断末魔が聞こえてきそうな恐ろしい表情とユーディットの美貌が対比しています。さらにカラヴァッジオは光と影を用いて描く技法が得意で、この絵画でもその技法がふんだんに使われています。白い光が当たった美しいユーディットに老若男女問わず心奪われた人は私以外にもいるんだろうなと思いました。

文:るるるるん

カラヴァッジョの「聖マタイの召命」はマタイが誰なのかという疑問が残る絵画です。

聖マタイの召命

カラヴァッジョの「聖マタイの召命」は彼自身の芸術家デビューとして、そしてバロック美術の歴史としてとても大きな意味を持つ絵画です。フランス人の枢機卿の命を受け1599年から1600年にかけて制作されました。この作品でカラヴァッジョの名が広く知れ渡る事になります。現在はローマにあるサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会でこの絵を鑑賞する事ができます。
この教会には本来、他の画家が描く予定だったと言われていますが、多忙のため断ったと言われています。もし、本来依頼されるはずだった画家が制作していた場合、この傑作は生まれずバロック美術が生まれなかった、もしくは生まれるのが数年遅かったと思うとゾッとする人は多いでしょう。陰影を使いリアルに、見事に描かれたこの作品を見に当時多くの人が行列をなしたと言われています。当時、この傑作を見る事ができた人はどれだけ幸福だったろうと思います。

この絵画は、イエス・キリストがマタイに呼びかけ、ついていったという場面を描いたものだと言われています。ですが、この絵画にはキリストも合わせて6人の人物が描かれており、どの人物がマタイなのかで広く議論を呼びました。現在では、一番左の人物がマタイであるとの説が一般的だそうです。

文:るるるるん

カラヴァッジョの「ナルキッソス」は究極のナルシストを描いた最高に美しい絵画です。

カラヴァッジョの「ナルキッソス」は分かる人と分からない人とに大きく分かれる作品だと思います。何故なら、この絵に描かれているのは水に映った自分の姿にうっとりと見とれている自分の姿だからです。
この「ナルキッソス」はタイトルの通り究極のナルシストを描いた美しい絵画です。絵に描かれているのがナルキッソスと水に映った彼自身のみなので、よりナルシストぶりが強調されています。
さらにナルキッソスの周りは暗く、彼自身は光を浴びたように明るく描かれているのでその美しさをじっくり堪能する事ができる絵画となっています。

非常に美しい絵画ですが、この絵画を私は真の意味で理解できてないと思います。私はどちらかというとあまり自分の事を好きではないからです。ですので、これほど自分の顔をじっくりと見たことはありません。むしろできるだけ見たくないとすら思っています。これほど自分の事を好きになる事ができたら、どんなに幸せだろうと思います。逆に、ナルシストの人はこの絵画を真の意味で素晴らしい絵だと理解できるのではないかと思います。

ナルキッソスはギリシャ神話で悲劇的な運命を辿りますが、その悲劇的な運命を知っているから、彼がこんなにも美しく見えるのかもしれないと私は思います。

文:るるるるん

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