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菱田春草

菱田春草の作品紹介

黒き猫

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日本で最も有名な猫の絵のひとつが菱田春草が亡くなる前年の文展に出品した”黒き猫”という作品でしょう。
菱田春草の名前を知らずとも、この絵を見たことがあるという人は多いのではないかと思います。
実はこの黒き猫という絵はたった5日で描かれた絵なのです。
菱田春草は日本画壇において日本画の新しい可能性を切り開いた功労者です。菱田春草はつねに新しい表現を追い求めて
研究を重ねてきました。無線描写に挑戦したり、西洋絵画の描かれている空気遠近法などを作品に取り入れたりしました。
時にそのような挑戦が評論家から評価されず、作品が罵倒されることもありました。
しかしながら横山大観からも一目置かれるほどその絵のセンスは群を抜いており
洗練されたものがありました。しかし、そんな天才の春草を襲ったのが目の病でした。
だんだん見えなくなる目と闘いながら春草は「王昭君」「落葉」などのちの重要文化財に指定される名作を多く書き残しています。
そしてその集大成ともいえるのが彼の亡くなる1年前に描かれた”黒き猫”です。
この作品の前に妻をモデルに女性画を描いていたのですが、あまりにも構図にこだわりすぎたため、
妻が貧血に倒れてしまい急遽描き上げられました。

猫の毛を表現したふんわりとした墨のボケぐあい、
そして猫を引き立たせるために簡略化して描かれた
背景。この見事な対比があるからこそ、猫がより
存在感を増して見えるのです。こうしたふんわりとぼかした
描き方は春草がかつて描いて評論家から罵倒された
輪郭を描かない無線描写法から生まれたものです。
春草は評論家から罵倒された後も、線に頼らない新しい日本画の表現を追求していたのです。
春草は猫以外の背景は1日で描き上げ、残りの4日をすべて猫の描写に捧げました。
なんども薄い墨を重ねて塗りぼかしにぼかしを重ねて猫のふんわりした毛を表現しました。そして紙の裏面から墨を塗り猫の毛の微妙な濃淡まで表現したのです。

この黒き猫が画壇に登場した時、一大ブームが巻き起こりました。
北原白秋、竹久夢二、速水御舟など多くの芸術家に影響を与えました。

文:ポマト

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