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アーツ・アンド・クラフツ運動

アーツ・アンド・クラフツ運動のここがすごい!

「芸術」と「環境」を融合した運動の先がけ

産業革命以後のイギリスでは大量生産による粗悪な商品が市場に溢れていました。そうした中で、中世に「古き良き時代」の理想を発見し、クラフツ(手工芸品)を通じて19世紀のイギリス社会にその「古き良き時代」を再現しようとしたのがアーツ・アンド・クラフツ運動です。ちなみに「オフィーリア」などの絵画で知られるラファエル前派も同じ理念を共有していて、アーツ・アンド・クラフツ運動と浅からぬ関係があります。

アーツ・アンド・クラフツ運動で中心的な役割を果たしたのが、思想家にしてデザイナーでもあったウィリアム・モリス(1834-1896)です。彼は大量生産による俗悪な商品を嫌って、生活を美しく豊かにすることを目的として、芸術性の高い手作りの家具・壁紙・ステンドグラスなどを制作・販売するためにモリス商会を設立しました。
モリスと彼の仲間たちがデザインしたこれらの工芸品は、現在でも多くのファンを獲得しています。日本でも女性を中心に多くのファンがいるようです。このように今も多くの人たちに支持されているのは、自然の素材を活かし、デザインも過多な装飾を排したシンプルで自然(植物・昆虫・鳥)をモチーフにするなど、自然環境(自然への回帰)や地域的な伝統を重視しようとするモリスの理念が、現代を生きる人たちにも共有されているからではないかと思います。

モリスの思想・理念の背景には、彼がイギリスの自然豊かな田園地帯で生まれ育ったことがあるのでしょう。我々がアーツ・アンド・クラフツ運動の成果である工芸品に魅せられるのは、都会での生活に疲れ果て、地域や自然の中での生活に憧れを抱くのと軌を一にしているように思えます。このような流れで見ると、アーツ・アンド・クラフツ運動は、市場経済や機械文明のアンチテーゼとしての「環境主義」・「環境運動」と捉えることもできるでしょう。アーツ・アンド・クラフツ運動は、単なる芸術運動の枠を大きく超えて、ライフスタイルや社会を変革する運動であったと言えるでしょう。つまり、過去の「古き良き時代」への回帰をめざすのではなく、むしろ未来志向の運動だったのです。

文:あ〜てぃ

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