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ラファエル前派

ラファエル前派のここがすごい!

美術史上最もスキャンダラスな「秘密結社」

ラファエル前派は、1848年ビクトリア朝のイギリス、ロイヤル・アカデミー付属美術学校の3人の画家であった、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイから結成され、その後ロセッティの弟である批評家の、ウィリアム・マイケル・ロセッティを含めた4人の画家、彫刻家がメンバーに加わって形成された、秘密結社の色合いの濃い集団です。

現在の私たちの倫理的価値観を覆す「スキャンダラスな芸術集団」として各地で展覧会が開催されていますが、
200年くらい前にこのような集団が発生し存在した事実や、芸術運動を展開、ムーブメントの後評価を勝ち得ていったところを驚くべき真実としてあげることができます。

絵画を観た当初(2014年春 森美術館開催)の印象は、絵画自体は写実的で線が細いものや、人物が真ん中に描写されたものなど作品自体はきれいにまとまっているような記憶であったものの、前代未聞のエピソードの方に衝撃が満ちており、言葉で表すことができませんでした。アメーバ的な内情を含んでいる集団で、それぞれに悪びれたところがなく、関係している点が彼ら独自の倫理観のバランスで秘密結社化していった結果、作品が世に出ていったのではないかと想像しました。

彼らに欠かすことができないとりまく人物たちと、ミューズとなる女性たちが数多く登場します。
説明に相関図が必要なほど、難解な関連性をもち、つかず離れずの関係である男女(男性側は既婚、女性側も?)、三角関係ののち婚姻解消を申し出て、結婚しなおし、のちに8人の子を授かる女性、現代的な自由度で発言闊達な女性、絵画のモデルとなっている美貌の女性、など織りなす人間模様自体がラファエル前派の作風の一部となっています。

詳しくご紹介するより、人間模様と作品とを実際にご覧いただくのが一番かと思いますが、最近の日本における不倫・浮気の不祥事ニュースが小さく思え、それどころではないぐらい、織りなす事実が面白くダイナミックです。
他人の価値観に依存することなく、お互いに影響を与えながらコラボレーションし作品を生み出し、生のパワーをすみずみにまで作品に昇華した集団だといえそうです。

文:soy

ラファエル前派の基本情報

近代美術・デザインの一大潮流

ラファエル前派はヴィクトリア朝の19世紀の中ごろ、産業革命で生まれた多量の工業製品に飽きたイギリスの中産階級のなかから生まれました。
ロイヤル・アカデミー付属美術学校の学生だったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイが1848年に結成し、狹義には彼等を指し、広義にはその影響下にある諸作家の総称となりました。
現在、展覧会でラファエル前派展と言えばたいがい広義の意で使われています。日本で最も有名な絵は『オフィーリア』で題材はシェイクスピアの『ハムレット』です。

ラファエル前派に特徴的な極めて精緻な描写がなされていて、描かれたひとつひとつのパーツが全て写真のように細かく描かれています。
夏目漱石は『草枕』で『オフィーリア』を、『三四郎』ではウオーターハウスの『人魚』を作中に登場させています。

理論家でもあったウィリアム・モリスは、丹念な手仕事の魅力を再発見し、近代デザインの父と言われ、壁紙から椅子、ブックデザインにいたるまで多岐の活躍をしました。
漱石の弟子の芥川龍之介の東大英文科の卒業論文は『ウィリアム・モリス研究』でした。
ラファエル前派は印象派とともに西欧近代の大きな潮流として近代美術、そしてデザインに多大な影響を与え、日本の近代、現代の美術にも深く浸透しています。

文:山岡司郎

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