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アルバート・ムーア

アルバート・ムーアのここがすごい!

美を求めて独自の道を歩み続けた画家

アルバート・ムーアは、イギリスの唯美主義運動を代表する画家です。
ムーアは1841年にイギリスの画家一家に生まれました。幼いころより家族から絵画を学び、1858年にロイヤル・アカデミー美術学校に入学。しかし、独立心が強い彼は数ヶ月で美術学校を退学してしまいました。
1860年代には、ラファエル前派の一員であるモリスの紹介で壁紙やデザイナーや壁画家として活躍しました。また、大英博物館で古代彫刻の研究もしました。
そうした経験を経て、画風も変わっていきます。 1860年代前半までは旧約聖書を主題にした新古典主義風の作品を描いていましたが、しだいに装飾的な美を追求した作品になっていきました。
それら主題のない「雰囲気の美」の作品で描かれたのは、ひだのある衣装を身につけた人物が装飾的な背景の中でたたずむ様子。その人物や衣装、装飾はギリシアを思わせるものでした。 また作品名も重視していなく、作品内の花や小物を作品名にすることもしばしばでした。
そうした作品はイギリスの唯美主義を代表するものとなり、一部では絶賛されましたが、ロイヤル・アカデミーでは評価されませんでした。そして1893年に52歳の若さで亡くなってしまいます。
ロイヤル・アカデミーで地位を得られなかったのは、ムーアの歯に衣を着せない性格が原因とも言われています。
一方、親しくなった友人は大切にしました。ホイッスラーとは特に親しく、画家として影響を受け合うだけでなく、彼が裁判になった際には証人に立ったほどでした。

文:sophia

アルバート・ムーアの作品紹介

美を追求した新たな一歩「稲妻」

重い雲に覆われ、稲妻が光る空を背景に、三人の女性が座っています。一人はゆったりとした様子、一人は驚き怯えた様子、一人は何かを訴えるかのようにこちらを向いています。これはアルバート・ムーアの異色の作品「稲妻」です。
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アルバート・ムーアはイギリスの唯美主義運動を代表する画家。唯美主義運動とは「芸術のための芸術」をめざす運動。絵画の世界では、文学などの主題にとらわれず美だけを追求しました。中でも、ムーアはギリシア彫刻に興味があり、ギリシア風の衣装を身にまとった人々が静かに佇む様子を好んで描きました。

しかし、「稲妻」では劇的な背景に、感情のある女性たちが描かれています。物語すら感じさせます。この作品が描かれたのはムーアの晩年。美しさだけではなく、見る者へ訴えかける表現の必要性を感じ始めたのでしょう。この作品はムーアの新たな一歩だったのです。

稲妻に対して三者三様の反応をする女性たちの姿に、私たちは性格を想像したり、共感したりしてしまいます。そして、こちらを向いている女性。この女性に話しかけられているように感じ、作品の世界に引き込まれてしまうのです。それでいて、ムーアらしい美しさは変わりません。美しい女性、ギリシア風の衣装とその繊細な質感、装飾的なバルコニー、アクセントとなる花々……。

「稲妻」は美と訴求力を兼ね備えたムーアの傑作だと言えるでしょう。

文:sophia

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