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アーサー・ヒューズのここがすごい!
家庭を大切にした心優しい画家
アーサー・ヒューズは、 ラファエル前派のメンバーではないもののラファエル前派風の作品を数多く残した画家です。特にロマンチックな雰囲気が魅力です。
1832年にイギリスに生まれたヒューズは、15歳でロイヤル・アカデミー・スクールに入学。 17歳でロイヤル・アカデミー展に初出品しました。
その翌年、 ラファエル前派の画家たちが発刊した芸術雑誌に強い感銘を受け、ロセッティやミレイなどラファエル前派の画家たちと親交を深めていきます。
1852年には、ロイヤル・アカデミー展にラファエル前派風の作品「オフィーリア」を出品。偶然にもミレイも「オフィーリア」を出品していて、2つの作品は並んで展示されました。
その後も、ラファエル前派風の鮮やかな色彩と精密な描写の作品を次々と発表。 特に、愛や美の儚さと直面した恋人たちを好んで描き、「四月の恋」や「長すぎた婚約」は代表作となりました。
作品が好評だったにも関わらず、ヒューズはロイヤル・アカデミーの会員にも準会員にも選出されることはありませんでした。
それはヒューズが物静かで穏やかな性格で、派手な成功や華やかな生活よりも、家庭という穏やかな幸せを大切にしたからだといわれています。そんな人柄だからこそ、美しくロマンチックな雰囲気の作品を生み出すことができたのかもしれません。
1915年に亡くなるまで絵画制作を続け、生涯に750枚もの挿絵、700枚以上の素描や絵画を描きました。
文:sophia
アーサー・ヒューズの作品紹介
オフィーリアの悲しみを描いた「オフィーリア」
シェイクスピア作の悲劇「ハムレット」。その中で失恋の末、狂死してしまう女性「オフィーリア」は、19世紀イギリスの画家、特にラファエル前派の画家が好んで描いたテーマでした。
中でも有名なのが、ジョン・エヴァレット・ミレイの描いた「オフィーリア」でしょう。その「オフィーリア」が出品されたアカデミー展にはもう一点「オフィーリア」 が出品されていました。それが、アーサー・ヒューズの「オフィーリア」です。これは全くの偶然のことだったそうで、また同じテーマとはいえ雰囲気もかなり違います。
死が迫っていることに気づかず、美しい風景の中で微笑すら浮かべているミレイのオフィーリア。一方、ヒューズのオフィーリアは、苦しげな表情で髪や服も乱れ、悲壮感がただよっています。自ら死に向かって歩んでいるかのように感じられるほどです。背景も荒れ果てています。
ヒューズは、ミレイなどラファエル前派の画家と交流があり、彼らの影響を大きく受けた画家でした。しかし、その活動には加わることはありませんでした。
そのことが表現の違いにつながったのかもしれません。見たものを忠実に再現しようとしたミレイに対し、ヒューズはオフィーリアの内面にスポットを当てたのでしょう。
ハムレットに捨てられ傷ついたオフィーリア。ヒューズの「オフィーリア」からはその悲しみや苦しみがあふれています。
文:sophia
想像力をかきたてられるロマンチックな作品「四月の恋」
戸惑った表情で振り返る青いドレスの女性。その鮮やかな青色にまず目を奪われてしまいます。しかし、背後の暗がりに目を向けると、黒い人影があります。これはいったいどんな場面なのでしょうか?
この作品を描いたアーサー・ヒューズは19世紀後半のイギリスの画家。ラファエル前派の影響を強く受け、ラファエル前派風の細やかな描写や鮮やかな色づかいで、ロマンチックな雰囲気の恋人たちを描きました。
その代表が「四月の恋」。
この作品は、テニスンの詩をモチーフにしています。愛のはかなさや苦しさを詠い、「愛とはいったい何でしょう」と問いかける詩です。
画面をよく見ると、女性と黒い人影の手は重ねられています。2人は恋人なのです。
女性の周りには蔦がしげり、足もとには花びらが散っています。女性の背後、男性のいるあたりは影になり、男性がいる窓の向こうには、明るい光があふれ花が咲き乱れています。
この場所にとどまり恋を終わらせるか、男性の元へ飛び込み恋を続けていくか、女性は悩んでいるのです。
イギリスの4月の天気は変わりやすく、青空は長く続かず雨が降り、雨空でもふいに日が差します。そんな天気のように変わりやすい恋人たちの心、そんな空のようにはかない恋。男性が光と花に囲まれつつも黒い影として描かれているのが、何とも意味深長で、恋の行方が気になってしまいます。
文:sophia
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