石井和紘の作品紹介
直島小学校・やわらかな既視感をまとう建築
建築家石井和紘氏の処女作であり、石井建築を語る上では外せない作品。
この小学校は山の麓に建てられており、左右対称の白い建物で中心部分には大きな傾斜が付いている。
中心部分は山の斜面に合わせて設計されており、自然の景観との調和を図った、当時としては珍しいコンセプトのもの。
直島小学校を設計した当時、氏は24歳であったという。
一度直島に訪れた際、見学したことがある。
校舎の中に入ると不思議な既視感を感じた。夢で見た風景のように懐かしい。日本の校舎にはあまり見られないような建築計画のなされた構成で、一風変わったアイディアが散りばめられている。
しかしそれらは自然の造形のように在り、現代建築にありがちな「言葉で構築したコンセプトの押し付け」を感じさせない。部分への細やかな気配りがあり、子供たちが安心して過ごせるだろうと感じた。
同様の安心感はフランク・ロイド・ライト設計による自由学園明日館を見学した際にも感じた。
子供の目線をきちんと意識された、丁寧な造りだと思う。
学生時代、縁あってご本人のご自宅に招かれたことがあり、お話する機会があった。
ニコニコとやわらかな、浮世離れしたような雰囲気をまとっておられる方だった。
永遠にすべてのものを新鮮な目で捉えることができる小さな子供と、博識で老獪な老人が同時に一人の人間の中に融合して存在しているようなタイプの方だと感じた。
合理的な思考を持つ建築家、というよりは、どこか作家のような佇まいである。
個人的な感想だが、石井和紘氏の建築物にもご本人の中に眠っているだろう、寓話的な物語性の反映を感じてならない。
個人的には、直島小学校は村野東吾氏設計の谷村美術館と並んで、他には観られないような個性とやわらかな存在感をあわせ持った、日本では珍しい部類の現代建築だと感じている。
文:南島真
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