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アントネッロ・ダ・メッシーナ

アントネッロ・ダ・メッシーナのここがすごい!

「静謐」を絵に描き続けたシチリアの画家

数年前、ローマでアントネッロ・ダ・メッシーナ展が開かれた際には、大変な話題になりました。アントネッロ・ダ・メッシーナは、その生涯があまり知られておらず、作品の質に比べて知名度が低かったせいもあります。
1430年頃にシチリアに生まれたアントネッロは、熟年期に入った40才頃からイタリア半島を北上し、ピエロ・デッラ・フランチェスカやジョヴァンニ・ベッリーニと交わり、遠近法や絵画の技術について切磋琢磨したと伝えられています。シチリアに生まれ、シチリアで亡くなったアントネッロですが、当時のイタリア半島の画家たちに彼が与えた影響は大きく、とくにヴェネツィア派はアントネッロ・ダ・メッシーナの存在なしには語れないといわれたほどでした。
宗教画を多く残したアントネッロの作品は、深い精神性に満ちています。モノクロの背景から浮かび上がる人物像、アレゴリーがちりばめられた宗教画、人物の内面を映し出す肖像画などから鑑賞者が感じ取るのは、「静謐」です。どのような場面においても、彼の作品からはちりひとつ立たない静けさを感じるのです。イエスの磔刑という残酷なシーンでも、アントネッロの筆は優美を忘れていません。救世主として描かれたイエスも書斎に籠る聖ヒエロニムスにも、画風には甘さが漂い、宗教者としての謹厳さではなく頼りたくなるような甘さを持っているのも、アントネッロの作品の不思議なところです。
宗教画を描いていても、アントネッロは聖人たちを「人間」として描きました。ピアチェンツァに残る「この人を見よ ( ecce homo ) 」では、宗教画としては珍しくイエス・キリストが涙を流しています。人間の弱さも残酷さも、アントネッロ・ダ・メッシーナは優しい色彩と典雅な線で描き出したのです。

文:cucciola

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