フラ・アンジェリコのここがすごい!
天使のような画僧フラ・アンジェリコによる「受胎告知」
フラ・アンジェリコ/ベアート・アンジェリコ (1395−1455)
ドミニコ会の修道士であるとともに、フィレンツェ・ルネサンスを代表する画僧です。
シエナ出身のカマルドリ会修道士で 国際ゴシック様式の大家、ロレンツォ・モナコに師事しました。
「アンジェリコ」とは「天使のような」という意味で、その名の通り敬虔な人物であり、天から授かった画才を以て信仰を形に現すべく、絵を描く前には必ず長い祈りを捧げてから絵筆を取ったということです。
彼の代表作『受胎告知』(1437−1446年頃)は、花の都フィレンツェのサン・ロレンツォ地区にあるサン・マルコ美術館(修道院)に所蔵されており、二階への階段を昇りつめた僧房の続く廊下の入口にあります。
新約聖書によるこの場面。
大天使ガブリエルが、マリアに近づいて言った。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」
驚くマリアをよそに、さらに言う。
「あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名づけなさい」
マリアは
「なぜそのようなことが? 私はまだ夫がありませんのに」
とのけぞると、大天使ガブリエルは、
「精霊によるのであって、恐れることはない」
さらに、
「生まれる子は聖なる者。神の子と呼ばれる」 と告げた。
落ち着きを取り戻したマリアは
「私は主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」
と受け入れた。
(ルカ福音書第1章26-38節)
数多くの画家によって描かれた「受胎告知」のなかでもフラ・アンジェリコの作品ほど静謐で厳かな精神性に満ちたものはないのではないでしょうか。
天使の羽の精緻な描写や、服の襞などはとてもリアルに描かれており、単なる宗教画にとどまらない絵画としての見応えもあります。ですが、なにより魅力を感じるのはこの場面にこめられた ”ドラマ性” です。
「おめでとう、マリア(アヴェ・マリア)」と受胎を告げる大天使ガブリエルの口元は柔らかな笑みをたたえて温かい眼差しを投げかけており、大天使が単なる ”伝令者” として訪れたのではなく、聖母として選ばれた女性に対し心から祝福を与えていることが伝わります。
一方のマリアは 手を上半身の前に交差して厳粛な面持ちで主のことばを受け入れているかのようですが、よく見ると胎内に宿った命を守っているような仕草にも見えます。
聖母らしい優美さとともに、母親としての普遍的な慈愛に満ちた名画だと思います。
文:Anne
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