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サンドロ・ボッティチェッリ

サンドロ・ボッティチェッリのここがすごい!

有名なヴィーナスの画家、展覧会にも注目

2016年1月16日から4月3日まで、東京都美術館にて、ボッティチェリ展が開催されています。(注:ボッティチェッリには表記法が色々あり、ボッティチェリ、ボティチェリ、ボティチェッリなどの表記もあります)

美術にあまり詳しくない、ボッティチェッリの名前も知らないという人でも、「ヴィーナスの誕生」という作品を知っている、観たことがあるという人は多いはずです。

ボッティチェッリは、宗教、神話、肖像を多く描いた、イタリアの画家です。15世紀、ルネサンス初期のフィレンツェ派の画家で、大聖堂でフレスコ画を制作していたフィリッポ・リッピの下で修業していたことから、中世的な宗教画や神話画の作風に大きな影響があったと思われます。写実性に富んではいるものの、自然主義とは異なった遠近感や、現実に存在する人物より崇高なイメージのある女性像などは、非常に古典的な作風です。そのせいか、彼が再評価されたのは、19世紀に入ってからでした。

フィレンツェのルネサンス全盛期の迫力ある彼の絵画は、宗教や神話に関心が無くても、絵から滲み出る荘厳な美しさだけで圧倒されてしまうでしょう。必見の価値ありです。

余談ですが彼は、本名は「アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ」であり、ボッティチェッリはあだ名だそうです。日本語で言うと「小さな樽」で、肥満の兄に対してこう呼ばれていたのだとか。彼のどこか神聖な画風からは想像もつかない、ユーモラスなあだ名ですね。

文:有紀黎

サンドロ・ボッティチェリの作品紹介

ギリシャ神話といえばこのビーナスの誕生

ヴィーナスの誕生という絵画はどの人も知っている有名なギリシャ神話を描いた作品です。
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このような大作が昔にあるという時点ですごいです。なぜなら、個人の芸術が流行しだした15世紀でも芸術のテーマはほぼ聖書の内容だったので、このような異なるギリシャ神話がテーマとなった作品があるというのが不思議です。なぜこのような絵画があるかというと、イタリアには特に経済的に繁栄していたフィレンツェには大富豪のメディチ家がいたからだと言われています。これには納得です。大富豪から沢山のお金をもらって、描く絵はその大富豪がほしいと思うテーマの絵になるのです。

このヴィーナスの誕生はボッティチェリというイタリアの画家のものですが、彼のすごいなあと思うところは、それほど人物が正確に描かれていないところです。首がながかったり、肩が不自然に落ちていたりします。でも、それなのに、とても美しくなめらかな心地よさを感じる絵なのです。ひとつひとつを見るとバランスがおかしかったりするのですが、なぜか全体でみるととっても自然なのです。優美な愛の女神がしっかり表現されていますし、衣服をまとっていないのに、不思議といやらしくない点も素晴らしいです。

文:mariko s

「ヴィーナスの誕生」は絵画の中でも特に美しい作品だと思います。

美術に関心のある人の中で「ヴィーナスの誕生」を知らない人はいないというほど有名なこの作品です。以前、版画複製画で有名な大塚国際美術館でこの作品を見た時、やっぱりキレイな作品だなと感激しました。

「ヴィーナスの誕生」は、1485年頃にイタリアの画家サンドロ・ボッティチェリによって描かれた作品で、同じくボッティチェリによって描かれた「プリマベーラ」と同じ寸法で描かれている事から対になっているのではと言われています。現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されており、本物をそこで見る事ができます。

「ヴィーナスの誕生」は、当時異教的と言われており、ボッティチェリの異教的な作品の多くは残念ながら焼かれてしまったそうです。ですが、絶大な権力を持っていたメディチ家と親しくしていたためヴィーナスの誕生は守られていたと言われています。この作品が守られたのは良かったのですが、どれだけの美術的価値のある作品が失われたのだろうと思うと心が痛みます。

この作品に描かれているヴィーナスは、少々首が長くリアルに描かれているとは言いがたいです。他にも少しリアルとは違う人体の描き方をしています。ですが、それがよりヴィーナスの美しさを強調しているのがこの作品の最大の特徴です。このヴィーナスがこれからもずっと多くの人々を魅力すればいいなと思いました。

文:るるるるん

「プリマベーラ」は最も美しい絵画の一つだと思います。

ボッティチェリの「プリマベーラ」は、美術を志す方や美術が好きな方なら一度は本やテレビ等どこかで見た事はある、そして本物を一度でいいから見てみたいと思っていると言ってもいいほど有名な作品です。
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1482年頃に完成されてから今でも多くの評論家達が議論を交わしている作品の一つで、おそらくこれからも多くの人を虜にしていく魅惑的な絵画です。
この作品ができたきっかけは明らかになっていませんが、もう一つのボッティチェリの有名な作品である「ヴィーナスの誕生」とは対になっている作品だと言われており、現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

この作品に「プリマベーラ」と名前をつけたのは、実はボッティチェリではなく、この絵画を見たイタリアの画家ジョルジョ・ヴァザーリだと言われています。

今まで様々な議論が交わされてきたこの「プリマベーラ」ですが、今は神話の世界に寓意が込められた作品であるという意味が主流になっているそうです。人によって解釈が本当に様々で、どの解説からもこの「プリマベーラ」に対する深い愛情を感じ、それだけ魅力的な作品なんだなと改めて思いました。

私は「プリマベーラ」は俗世のヴィーナスを描いたものであるという説が好きです。この作品には「死」が深く関わっている事も分かっているそうですが、死も愛と美の女神であるヴィーナスがいることで恐怖が和らぐと思うからです。

文:るるるるん

サンドロ・ボッティチェッリの基本情報

花の都フィレンツェの盛衰と共に生きた画家

15世紀のフィレンツェ。花の都の名を持つ人口わずか6万のイタリアの一都市からルネサンスの芽は成長し、やがてヨーロッパに大きな花を咲かせました。
そのフィレンツェ隆盛を支えたのは商人から成功し莫大な財力を手にしたメディチ家でした。メディチ家の庇護の下、当時のフィレンツェでは見事な建築物が次々と作られ町中は活気に溢れていたのです。
サンドロ・ボッティチェリが生まれたのはまさにこれからフィレンツェが時代の中心になろうとしていたこの時期でした。
才気煥発だった少年ボッティチェリは15歳で流行画家フラ・フィリッポ・リッピの工房に弟子入りします。当時の工房では、主人を中心に弟子達が分業で作品を仕上げていました。並外れた才能を持っていたボッティチェリは早くからその才を認められ、ヴェロッキオの工房を経て25歳の若さで独立します。
ボッティチェリは多作で知られていますが、これほどに絵を描けたのはメディチ家の後援を受けたことが大きかったようです。
画家でありながら時代の空気を読むことに長けていたボッティチェリは、メディチ家を頂点として栄えていくフィレンツェの街の空気を的確に捉え、それを美しい芸術へと昇華させることでその地位を確かなものにしていったのです。
彼の代表作である「春」や「ヴィーナス誕生」には、古典文化の再生を目指したルネサンスの思想が色濃く表れています。
厳しい教会の支配から離れ自由を謳歌するそれは、繁栄を誇ったフィレンツェの姿そのものでもあったのです。
しかし、メディチ家当主の死とフランス軍の侵攻によりフィレンツェの繁栄は幕を閉じます。
修道士サヴォナローラの説く禁欲的な思想に感化された市民は多くの芸術品や美術品を焼き捨てました。
ボッティチェリ自身も、暗く陰った街の空気に感化されたように宗教的苦悩を感じさせる沈んだ絵を描くようになり、やがて絵筆を握ることも止めてしまいます。
愛と輝きに満ち溢れた神々の姿を彼が描くことは二度とありませんでした。
フィレンツェの盛衰と共に、ルネサンスを代表する画家ボッティチェリの時代も終わりを迎えました。

文:雪まつり

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