エドゥアール・マネの作品紹介
ジャポニズムと西洋絵画の挾間で非難を浴びた絵画「オランピア」
エドゥアール・マネは1800年代のフランスで活躍した画家でした。
裕福な家庭に育ち、17歳から本格的な絵画への道に進みます。
当時の若手画家の登竜門であるサロンには30代で二度入選。伝統的な絵画を学んだ成果が出た時期でした。
しかしその後サロンで入選した「オランピア」は一大スキャンダルを巻き起こします。
当時のフランス絵画の世界では女性のヌードなど当たり前でありながら、この裸婦像だけはなぜか非難の嵐となったのです。
その理由の一つが、技術的なものでした。
それまでの西洋絵画は遠近法を使い画面に奥行を出す事を良しとしていました。
しかしこの作品では、その遠近感が今一つ感じられません。2人の人物の奥にあるはずの空間は、あるのかないのか……ただ、黒く塗られるだけ。また、人物も一応立体的ではあるのですが、従来の西洋絵画と比べるといささか平面的である事は否めません。
なぜマネはあえて平面的な画面を作ったのでしょうか。
そこにあったのは、ジャポニズムからの影響でした。
この時代の画家の多くが、浮世絵に衝撃を受けています。
マネもまた、浮世絵に衝撃を受け影響を受けていました。
浮世絵では、西洋絵画のような対象のボリュームを出すことを重要視しません。
線によるデッサンを重要視しています。
マネは、浮世絵の平面的な画面と伝統的な西洋絵画のボリューム感との両立という非常に困難な技術を、このオランピアで実現して見せたのでした。
しかし、まだまだ保守的だった当時のフランスの絵画愛好家たちはマネの革新性を理解できずにいたのです。
もう1つの非難の理由は、この絵画が明らかに娼婦を描いていたからという点でしょう。
当時のフランスは豊かであった分、道徳が崩壊し、それを表向きの厳しさで見て見ぬふりをしていた状況でした。
マネは、そんな時代の空気を感じ取り、恥じらいも女性的な優しさもなく無機質な目で客を見つめる娼婦を描き出したのです。
当時の「紳士たち」は、この絵の女性の眼差しから自分たちの隠しておきたい一面を見透かされているようにさえ感じたことでしょう。
マネはこの絵について語っています。
「私は自分の見たことを簡潔に表現しただけだ。」
生粋のパリジャンで小粋な紳士だったマネですが、それだけに時代の空気に敏感であったのでしょう。
マネが死ぬまでアトリエに置かれていたこの作品でしたが、今はルーブル美術館所蔵となっています。
現代の人々は、このオランピアと名付けられた女性の冷めた目に、何を感じているのでしょうか?
文:小椋 恵
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