ウィリアム・ブークローの作品紹介
「ファースト・キス」二人の可愛らしさに癒される
おそらく、画家の名前はあまり知られていませんが、絵を見ると「ああ、これか!」と見覚えが思います。ギリシャ神話のプシケとアモールの子供バージョンです。キスはもちろん頬、この初々しさが可愛らしい。プシケのピンクに恥じらう頬もまた子供らしくて可愛らしく、見ているだけでどこか満ち足りて幸せな気分になります。
プシケとアモールはよく使われる題材ですが、だいたいが青年とうら若い女性で描かれていて、ブークロー自身も、プシケを抱きしめて飛び立つアモールを描いています。
あえて子供にした理由はわかりませんが、目こそ合わせていないものの、プシケはきちんとアモールからのキスに、恥じらいと言う形で答えています。こんなに双方向なプシケとアモールはあまり見かけません。この二人を扱った絵は、想い合いながらもすれ違う構図や場面が多く、どれも素晴らしさと同時に切なさを覚えます。
案外ブークローが活躍した頃には、描き尽くされたであろうこの主題に彼なりの解釈を加えたのかもしれません。
なお、彼が活躍した同時代には印象派がいて、ブークローがサロンでもてはやされた、その裏で、いわゆる落選展が行われました。選定するのはブークローではないので、ブークローのせいではありませんが、ブークローのような古典主義をきちっと守る画家がいたからこそ、後に印象派と呼ばれる画家たちは、心置きなく新しい技法や実験的な技法に挑戦する事ができたのではないでしょうか。
文:クロエ
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