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ベラスケス、光と影の宮廷画家。のここがすごい!
小学生の時にこうした絵をもっと見ておけばよかった
ベラスケスは、17世紀スペインバロック期の宮廷画家です。
写実主義の中に明暗を取り入れ、当時にして現代の様な空間を演出する卓越した技法を持つ肖像画家でした。
今でいう、「◯◯の権威」といった感じの偉そうな先生のイメージがあります。
数十年前の高校生の時に、上野の西洋美術館に美術部の先生に連れられ、初めてちゃんと西洋の絵画を観賞したのが、このベラスケスでした。
作品はとにかく大きかったです。そして、油絵が透明油彩であることを実感しました。
帰り道、私はこうした本物の作品をちゃんと見る機会が遅かった、と悔やむような気持ちで一杯でした。
小学生の時にこうした絵をもっと見ておけばよかった…と。
今見て学んでも、もう遅いと思ったのを憶えています。
私の子供の時代は、スポーツに比べると美術や文芸は軽んじられていましたし、印刷で名画をサラッと教えるくらいで、当時の印刷技術はあまり良くありませんから、ベラスケスのスケール、透明感にこれまでの油彩の既成概念が崩れたのです。
印象に強く残ったのは、ベラスケスの代表作である「マルガリータ王女」8才の時の肖像画でした。
今でも遠くから吸い込まれ引き込まれるような大作の凄さが記憶に残っています。
当時の解釈は説明文通り、若くしてオーストリアとの政略結婚をし、21才で早逝した王女のお見合い用肖像画。
写真がない時代の王室とはいえ、すごいスケールの肖像画です。
そしてこの王女の肖像画が何枚もあり、顔の輪郭が素人目にも印象的でした。
ベラスケス晩年の一連の作品、そして政治的な期待を一身に背負っていた王女の肖像画とはいえ、それ以上の何かを感じさせるのですが、知る由もありません。
文:まるちゃん
印象派に影響を与えた偉大なる肖像画家
現在目にすることのできるフェリペ4世の肖像画は、ほぼベラスケスの筆によるものと言っても過言ではないでしょう。
ディエゴ・ベラスケスは、17世紀のスペインでフェリペ4世にもっとも重用された宮廷画家でした。
当時のスペインは30年戦争に敗れ続け、また国内各地で内乱が起きるなどその栄華に陰りが見え始めていました。しかし国王フェリペ4世はそんな状況を憂えることなく優雅な宮廷生活を送ります。その王の庇護のもと、ベラスケスは王侯貴族の肖像画を数多く描きました。
彼の描く人物は、まるでスポットライトを浴びているかのように画面の上に明るく浮かびあがります。見る人に、その人物の姿かたちだけでなく内面の感情までも教えてくれるような忠実で優れた描写は、当時から高い評価をうけました。
ベラスケスの絵は、離れてみると非常にはっきりと描かれているように見えますが、近づいてみると輪郭がぼんやりしてきます。
これは、彼が色の明暗や筆使いを変えて輪郭を描き出している為です。
このベラスケスの技法は、後の印象派に大きな影響を与えました。
きらびやかな宮廷で着飾った人々を描いたベラスケスの絵に、印象派と呼ばれる後世の画家たちは、何を見出したのでしょうか。
マネはベラスケスを「画家の中の画家」と称しました。
文:雪まつり
ディエゴ・ベラスケスの作品紹介
お見合い写真としての肖像画
ベラスケスは1600年代に活躍した、スペインの宮廷画家でした。
彼が老齢差し掛かった時、スペイン宮廷で愛らしい王女が誕生します。
宮廷画家として、ベラスケスは何枚ものマルガリータの肖像を描きます。
そのうち、3枚はウィーンに残されています。
『バラ色の服の王女マルガリータ』『白い服の王女マルガリータ』『青い服の王女マルガリータ』
それぞれ、3歳、5歳、8歳の時の王女マルガリータの姿です。
あどけなかった幼女が美しい少女に成長してゆくさまは、まるでアルバムを見ているようです。
これらの作品は、お見合い写真としてウィーンに送られたものでした。
当時の貴族でしたら、政略結婚は当たり前。
ウィーンと手を結びたかったスペインは、マルガリータの肖像画を送り、お見合いを進めていったのです。
その政略は実り、15歳でマルガリータはウィーンに嫁ぎます。
政略結婚ですが、結婚相手の王にも周囲にも大切にされ、幸せな結婚生活を送ったようです。
現代のように写真が無かった時代、絵画はお見合い写真の代わりとしても使われていました。
そして、そのことが現代に美しい絵画を残すこととなったのです。
なお、ベラスケスが描いた王女マルガリータは、肖像画だけではなく群像もあります。
代表的なものは『宮廷の侍女たち』マルガリータを中心に、マルガリータの侍女たちやそれを描く自分をも描きこまれています。
そして、我が子を見守る王と王妃は、画面中央近くの鏡の中に、そっと書き込まれているのです。
文:小椋 恵
ディエゴ・ベラスケス「ラス・メニーナス」はベラスケス自身が出ている斬新な作品です
ディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス」を大塚国際美術館で見た時、とても不思議な構図の作品だと思いました。
この絵の舞台は1600年代、フェリペ4世の時代のスペインです。一番手前にキャンバスがあり、キャンバスの後ろでは幼女の頃のマルガリータ王女を中心に女官や犬、矮人達が取り囲んでいます。そしてベラスケス自身も左側でキャンバスに向かっている場面が描かれています。まるで日常をただそのまま切り取ったかのような構図なのに、実は複雑な構図で未だに多くの謎が残されています。
この絵をよく見てみると、鏡に小さく二人の男女が映っています。この男女は国王フェリペ4世夫婦の姿で、画面の登場人物の多くはこの国王フェリペ4世を見ている事が分かります。実はこの絵は国王から見た場面を描いているという絵画だという説があり、この説を見た時に「日常のスナップショットだと思っていたのに実はそんな深い意図があったのか」と心底驚きました。ただ、それにしては王女とベラスケスの目線がおかしいという説もあります。
また、ベラスケス自身が誰を描いているのかも疑問が残ります。王女を描いている場面にしてはキャンバスが遠いですし、国王夫婦を描いているにしては不自然です。この絵画が何を意味しているのか様々な考察があり、その考察も一緒に楽しむ事で何通りもの楽しみ方ができるとても深い絵画だと思います。
文:るるるるん
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