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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールのここがすごい!

数百年間、忘れ去られていた画家

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール。日本ではラ・トゥールと呼ばれることの多い画家。
夜の画家の別名を持ちます。
暗闇から蝋燭のわずかな明かりで照らし出された人物像を描くことが多いからです。

残された作品は少ないのですが、暗闇の中で物思いにふける人物像(『悔い改めるマクダラのマリア』など)は私たちが普段忘れがちが自らの内面と向き合う勇気を思い出させてくれるようです。

実はこの画家、数百年間もの間その存在を忘れ去られていました。

1600年代にフランスの国王付画家としての称号を得ています。そうでありながらも、その死後は文献に名を残すのみで、実在さえも疑われていた時期さえありました。

ラ・トゥールの時代、画家は芸術家というよりは職人だったため、後に貴族となった子孫がその存在をあえて隠した説。
ラ・トゥールの人間性があまりに傲慢で吝嗇であったために、亡くなった後は反発する人物たちがあえて隠した説。
あまりに急に病死し(当時ヨーロッパで大流行していたペストだったといわれています)、またその後に相次いで家族や弟子が亡くなっていったために作品リストを作る人物が残らなかった説…

所説ありますが、今となっては深層は彼の作品のように闇の中なのです。
1900年代に入り、ある美術研究家が長年作者不詳だといわれていた絵画がラ・トゥールのものだと発表。
その後、次々とラ・トゥールの作品が見つかります。中にはパリの骨とう品店の戸棚から埃だらけになって放置されていた作品さえありました。

ラ・トゥール自身は先ほど述べたように、人から好かれる人間性ではなかったといわれています。
権力者へのへつらい、下働きの人間へのいじめ、召使が盗んできた豚を横取りしたことさえあったとか。

しかし、裕福とは言えないパン屋の息子が国王付画家になるには、人間性を押し殺さなければならかったのかもしれません。
そして、その押し殺した人間性、精神性を、ラ・トゥールは画布にぶつけたのでした。

文:小椋 恵

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品紹介

ジョルジュ・ラ・トゥールの幻想世界。

常夜灯のあるマグダラのマリア

暗闇の中に灯る一つの炎、その傍らには頬杖をつき、膝に頭蓋骨を置いて座っている女性。

ラ・トゥールの代表作である『常夜灯のあるマグダラのマリア』は、見ている人を一瞬で静寂世界に誘い出す幻想的な魅力を持っています。「暗闇に炎、膝に骸骨」という組み合わせで考えると、一見とても怖い絵のように感じる方もいるかもしれません。しかし、この絵は「イエスと出会い、悔悛するマグダラのマリア」を表現した宗教画とされています。

この作品を初めて美術館で目にした時、私には宗教画に関する知識は全くありませんでした。ですが、作品に描かれた頭蓋骨や暗闇に対して不思議と恐怖を抱かなかったことを覚えています。むしろ、なんて美しい絵なのだろうと見とれていました。

私にとって本作品に描かれたマグダラのマリアは、静かな夜の暗がりに明かりを灯して物思いにふけている平凡な女性に見えたのです。誰しもが持つ他人に見せない夜の一面を描いた、とても身近で切ない情景に思えました。何より、蝋燭の灯りが絵で描かれたものとは思えないほどに繊細で、本物の灯りがそこにあるかのように思えたことに感動しました。

本作品だけに限らず、夜・暗闇の情景を描いたラ・トゥールの作品は、暗闇の深さと同時に明かりの偉大さ、美しさを教えてくれます。

文:brown

『聖ヨセフ』 『聖誕』 『いさかま師』 – ラトゥール 光と影、静と動が錯綜する不思議な世界

バロック絵画の礎を築いたカラヴァッジョに追随する画家、すなわちカラヴァジェスキの一人とも称されている。作品の数も少なく、多くを知られていない点においては画風と同様にミステリアスとも言える。
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『聖ヨセフ』では、宗教の題材を日常の出来事風に描き出している。腰を曲げたヨセフが作業に没頭し、傍らでは少女が蝋燭を手にヨセフになにか話しかけている。夜の闇に浮かぶ薄明り、老人と少女のコントラスト、作業の音と少女のつぶやきだけが響いているような空気感まで感じられる力作。
個人的には『聖誕』が印象深い。旅の途中でフランスのレンヌに立ち寄った際に偶然出会った。暗闇の中に、生まれたばかりのキリストを聖母が大切そうに抱いている。すべてが静謐、純粋、高潔。特別な存在を天からの授かりものとして扱いつつも、母の愛がにじみ出た作品。その4年後に筆者自身も子を授かったのだから非常に縁深い作品である。
対して『いさかま師』では嘘と欺瞞に満ちた世界が描かれる。複数の男女が共謀に加担して一人の若い男を罠にかける。世間知らずで人のよさそうなこの若者はいつになったら騙されたことに気づくのだろう。劇的な作品を残した画家はしまいには家族もろともペストに侵される。妻、子の順に大切な家族を失った彼が絶望の淵で最後に思ったことは…。最後までミステリアスな画家である。

文:しずか

「大工の聖ヨゼフ」は親と子暖かさを感じる大好きな絵画です。

2009年、私はたまたま京都へ行った時にルーブル美術館展をしていたので、せっかくなので見に行く事にしました。その時に一番印象に残ったのがこの「大工の聖ヨゼフ」です。

暗闇の中で父親のために光を灯している幼いころのキリストとその光を頼りに懸命に作業をしている聖ヨゼフ、二人の愛情とお互いが信頼しあっているのがよく分かるとても穏やかで温かい絵画です。

この作品を目の前にしてもっともっとよく見ていたいと思ったのですが、同じ気持ちの方はもちろん私以外にもたくさんいたのであまりゆっくりと見る事ができなかったのが心残りです。ですが、それだけ世界中の人を魅了している作品なんだな、この絵の魅力は老若男女問わず世界共通なんだなと思うととても嬉しく思いました。

これほどの作品を描いたジョルジュ・ド・ラ・トゥールの生涯については残念ながらあまり詳しいことは分からないそうです。この聖ヨゼフに関しても1640年頃に描かれたという事は分かっていますが、どういう目的で描かれたのかはほとんど分かっていないそうです。しかも発見されたのは1938年とわりと最近の話という事に驚きました。

この温かい絵は、何度でも見たくなる不思議な魅力に溢れている作品です。また日本で見る事ができるなら是非どこでも駆けつけたいと思います。

文:るるるるん

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