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アレクサンドル・ロトチェンコ

アレクサンドル・ロトチェンコのここがすごい!

現代アートはロシア構成主義から始まった!

ロシア構成主義は1910年代から1920年代、ロシアにおいて流行した芸術運動です。そう聞いてもなんのことだか、ピンとこない人も多いと思います。
しかしロシア構成主義こそ、20世紀を通じて、そして21世紀の現代アートの可能性までも切り開いた先駆者といえるのです。

ロシア構成主義を代表する作家にアレクサンドル・ロトチェンコがいます。その1919年の作品、連作「フランスの闘い」は人間の全体像を描いていますが、すべて定規とコンパスを使って描かれていて、人間が持つ線の微妙なフォルムは排され、まるで記号のように描かれています。
これはロトチェンコのすべての作品に言えることで、画面の中は円と直線によって空間構成されています。この発想の裏にあるのは、当時急激な勢いで浸透しつつ合った自然科学があり、ロトチェンコは画家が作品を作る時に、その主観や感性というものを重視しつつ、キャンバスの中に円と直線の方程式を算出するように作品を描いていきました。

またロトチェンコの先駆性は、単にキャンバスの中に絵を描くということに留まらず、建築デザイン、布地デザイン、服飾デザイン、演劇セットのデザイン、ティーポットなどの日用品のデザイン、本の装丁などにまで及び、この時、芸術家は初めてキャンバスという限られた空間から解放され、自身の才能を多岐に発揮することができるようになったのです。

このことは1910年代から1920年代というロシアの情勢にも関係していて、当時ロシアは革命前夜でした。ロトチェンコの主張は、芸術は一部の特権的な人々が作品を所蔵し鑑賞するものではなく、日常の生活の中に活かされてこそ真の価値がある、というものでした。これは間違いなく、社会主義思想や共産主義思想の影響を受けたものです。
ロトチェンコの傑作に、1924年に製作されたポスター「レンギス(国立出版社レニングラード支部)あらゆる知についての書籍」がありますが、この作品は今見ても斬新です。
大きく描かれた円の中に女性の頭がコラージュされていて、その口からはロシア語で「書籍」という文字が飛び出すように描かれています。そしてその右の空間にまた「あらゆる知についての」と描かれています。

この作品をはじめ、ロトチェンコ以外が手がけた当時のロシアのグラフィックデザインを見ると、際立つ手法としてコラージュ、モンタージュなどが目だちます。
ここには写真技術の普及、印刷機器の進化など、当時のロシアの芸術家たちが先進の技術を駆使していたことが分り、ロシア構成主義をはじめとするロシア・アバンギャルドの世界的水準の高さが分ります。

現在、私たちの日常生活には、さまざまなところでデザインというものが氾濫しています。それはポスターや本の装丁といったグラフィックデザインだけではなく、さまざまな商品、企業のロゴ、普段着ている服、生活用品とあらゆる場面でなくてはならないものです。
それらに囲まれて暮らしている私たちは、それを当たり前と思っていますが、日常の中にデザインを取り込むということを初めて提唱したのが、アレクサンドル・ロトチェンコであり、その実践方法としてのロシア構成主義があったのです。
およそ100年前のロシア構成主義の作品を見る時、その作品の斬新さに心奪われるのはもちろんなのですが、もしかしたら、ここで現代アートの手法はすべてやり尽くされていると感じるのもまた事実なのです。

文:supersugano

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