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ポール・セザンヌ 印象派のここがすごい!
セザンヌの情熱、友情、色彩
セザンヌの凄さと言ったらやはりその独特の理論でしょう。
物を円錐や球体のように見立て空気感と立体感を感じさせる、これは当時たいへん画期的なものだったと言われていて、この後ブラック、ピカソといった本格的なキュビズムにつながる事になります。
ですのでキュビズムの元祖と言っても過言ではないと思います。
特に静物においてはりんごなどのしっかりとした赤み、発色は元となった印象派や後のキュビズムのまさに中間であり、絵画の歴史が読み取れます。
『リンゴとオレンジのある静物』などはその傾向が読み取りやすいでしょう。
セザンヌはどちらかというと晩年近くに目立った作家ですが若かかりし頃にも印象派として精力的な作品制作をしており、明るい色調の味わい深い絵を書かれています。しかしその当時は絵について理解されず批判も多かったそうです。
それでもくじけなかったセザンヌの絵の情熱の背景にはルノアールやモネなど芸術家同士の交流がありました。
特にモネなどはセザンヌの絵について熱愛してしたほどで、他の作家もあるべき賞賛をセザンヌに送りました。
展覧会においてもセザンヌ関連で論争が起きやすかったので彼らに手紙を送って身を引いたという記述もあります。
芸術家同士の友情から生まれた絵画の歴史を感じられる作家です。
文:みみみみみ
気難しく極めて父性的な強さを持ち、負け組でも後にさすがの影響力!
ポール・セザンヌ(1839.1.19〜1906.10.23)はフランスのエクサンプロバンスに生まれ、ルノワール、モネらの印象派のグループの一員として活動していましたが、1880年代からはグループを離れ、伝統的な絵画の約束ごとにとらわれない手法で個性を追求する「ポスト印象派」の代表的な画家となりました。
孤高の探究者、芸術の父とも評されていますが、一生涯を通じ銀行家だった父親を恐れていたことや気難しい性格といった、父性に影響を受け続けた人物であることが様々なエピソードによって伺い知ることができます。
1月はタイミング的にはやぎ座生まれになりますが、真面目でどっしりとしており、若さがあまり感じられず大人びているといった雰囲気が常に漂うのも、そうしたところからなのでしょう。
彼は印象派の全盛期、何度出品しても印象派グループでは認められずに、選に落ち続けています。
その時代の主流だった、風景をきれいに切り取ったような人気の作風が、彼のもともと持っている技が活かしきれなかったのかもしれません。家に飾るために描いた、父親への絵は4枚のさわやかな色使いをしたもので、現在のセザンヌとなる前の作風なので、さわやかな美しさの絵の印象はあるものの、え、これセザンヌ?と言う絵でしかありません。
彼の強情さや緻密な視点の持ち味が出ていないからそう思ってしまうのかもしれません。
いわゆる「負け組のセザンヌ」ともよく言われていますが、父親の莫大な遺産が転がり込んで若い頃のストレスが、晩年には製作に没頭できる環境とともに評判も上がり、最終的に這い上がったと言えるところが、若さの勢いのある画家と対照的と言えそうです。
地味でも気難しい性格でも、年を重ねるほどにプラスに作用し、重厚な絵の作風や魅力につながったのではないかと思えますが、もともと後咲きの星を持って生まれた画家だったのではないかなと思います。
若くして才能を出し尽くす芸術家がいる一方で、こうしたミドルからシニアに向けて力を発揮していった人物は、今現在に置き換えてみると非常に興味深く、人間の一生のエネルギーのウエイトがどこにあるかのひとつのサンプルとしても面白い人だったのではないでしょうか。
彼自体は、先を見越した人物であったかは定かではありませんが、デッサン上でも動かず固着したものを好んだようです。
その場その場で気難しいがんこ者発言があったようで、後に妻となるモデルのオルタンスが動くのもとても嫌いました。
そういったことでは、静物画のモチーフのりんごや果物はまさにうってつけの題材であったようですね。
しかし、セザンヌは友人や周囲の人々にとても恵まれてきた人だといえます。
動かないものを好むようなじっくり派だった彼も、オルタンスと結婚後には屋外でスケッチをするような影響を受けて題材のチョイスが少し変化がみられるようで、広く芸術を志す男性は、目立たないひとりの女性からインスピレーションを得たときに、驚く程の内面の変化を見せることがあります。ま、これは芸術家に限ったことではありませんが、がんこ者だったセザンヌが描いた妻の何枚かの絵には、動くことを止められご機嫌ななめなのか、父親に伏せられたままの結婚生活に疲れたか、憮然とした表情の絵がありますが、女性の顔の表情にも愛らしさややわらかさといった、ルノワールのような華やかさが感じられませんが、それでも彼らしいしっかりとしたタッチを目の当たりにすると、絵からにじみ出た人柄を感じとることができます。
後に、彼独自のいくつかの視点とフォーカスが真ん中に来るように、調整しながら描かれたような曖昧な遠近法を駆使した作風が、
キュビズムにつながり、パブロ・ピカソ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、アンリ・マチスなど個性豊かな作風の画家へ多大な影響を与え後世へ勢いを繋ぎました。
負け組だった彼が、中年以降に後輩から、芸術の父と慕われるようになっていくというエピソードは、若さ偏重主義ではなく、自分の個性を開花させながら、自然に年を重ねていくという勇気をもらったような気がします。
文:soy
ポール・セザンヌの作品紹介
「モンジュルーの曲がり角」
セザンヌの絵は、リンゴが描かれた静物画が有名です。はっきりとした色合いで、育ちの良さを感じさせる豪華な作品が魅力の作家です。
また、風景画も有名です。セザンヌ風景画は、家を主役に描かれていることが多いのですが、モンジュルーの曲がり角は、題名の通り曲がり角が主役の絵画です。
やはり、絵の中央には小さなシンプルな家が描かれているのですが、不思議と家は主役のように感じません。家は、微妙に傾いたように描かれていて、曲がり角を表現しています。また、この絵は、日差しの強さを描くのに重要なモチーフです。
しかし、この絵の一番の魅力は、絵を見ている人が、実際にこの道を歩いてきて曲がり角を曲がる瞬間の空気感を感じられるところです。
この場所の風景画美しいのならば、写真を撮ってくるなり、具象的に描けばいいのです。しかし、曲がる瞬間の空気を描き切れていることで、この場所の雰囲気や空気までも絵から感じることができるのです。それは、構図だけでなく、色や形のすべてが重なり合って表現できるのだと思います。うっそうとした緑と、強い太陽の光を感じる赤みは、気温までをも感じる作品です。
曲がり角を曲がったあとも、まだ先に道が続いており、一体なにがあるのだろうと想像力をかりたてる作品です。
文:式部順子
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