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アドルフ・ムーロン・カッサンドル

アドルフ・ムーロン・カッサンドルのここがすごい!

クールなカッサンドルポスターに酔いしれる

彼の名はアドルフ・ジャン=マリー・ムーロン。ペンネームをカッサンドルと言います。最近この名前を聞いたことがあるという人もいるかもしれません。埼玉県立近代美術館で「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」が2017年3月26日まで開催されていまして、行った人たちからは「良い展示だった。彼のポスターはとにかく格好いい!」との声をよく聞いています。そんなに評判ならば、見に行ってみたいけれどそもそもどんな人かよくわからないという方に向けて、簡単に彼とその作品について解説します。

彼、元々は画家を志望していたのです。グラフィックデザインはバイト感覚で引き受けていて、「ポスターは売り手と公衆の単なるコミュニケーション手段にすぎない」という言葉でもわかる通り、グラフィックデザインは単なるツールとして割り切って捉えていました。
しかしそれ故に彼のデザイン、幾何学的形態を多用していて非常にクール且つコンセプトが明快です。今見ても格好いいのですから、当時の人に与えた新鮮な驚きはどれほどだったか…。

そんなわけで、予期せず売れっ子になってしまった彼は、グラフィックデザインの道へ進んでいくことになります。その過程で彼はグラフィックデザインに対して「(芸術画家が)失った公衆との回路を再発見する」ものだと考えを改めデザイン事務所「アリアンス・グラフィック」を開設しています。

さて、彼のデザインしたもので有名な作品と言えば「ノルマンディー(1935年)」のポスターでしょうか。船の巨大さが一目見ただけで伝わってきます。ゴゴゴ…とこっちに突き進んでくるかのような錯覚さえ覚えますよね?
カッサンドルの乗り物系のポスターは、そうした動きの表現が非常に優れています。「北方急行(1927年)」は、目の前を凄いスピードで走り抜けていく機関車の風までも感じそうです。船は巨大さ、機関車はスピード…デザインの対象のどこを最も伝えたいのかが誰が見ても一発でわかる。ポスターデザインの理想形ではないでしょうか。キュビスムのような幾何学形態を多用したデザインは当時アール・デコ様式が流行っていた時代にもぴったりとマッチしています。

本人の実力に時代の恩恵も重なって、人気の出たカッサンドルですが、現在でも彼のデザインした作品はしっかりと世に根付いています。何だと思いますか?

それこそ、「イヴ・サン=ローランのロゴ」。
今尚燦然と輝く、カッサンドルの傑作です。

文:神野戒

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