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印象派

印象派のここがすごい!

科学技術が生んだ美しい絵画流派

印象派。
あまり絵画に興味のない人でも、この言葉くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかしこの言葉の始まりは、実は軽蔑に満ちたものだったのです。
1874年のパリ。とある写真館で絵画の展覧会が開かれました。
出品したのはそれまでの伝統的な絵画に疑問を抱いたり、なおかつサロンにも落選続きであった画家たち。
展示された作品は、それまでの伝統的な絵画の常識では考えられない表現をされていたものばかりでした。
伝統と重んじていた当時の芸術の世界で、彼らの作品は情け容赦のない批判にさらされます。
その中でも特に批判の的となったのがモネの「印象・日の出」でした。
これは日の出の一瞬の光を切り取った卓越した作品なのですが、当時は落書きと批判され、この展覧会に関しては実に長い批評文が発表されてしまいます。
しかし皮肉なことに大きな批判が逆に注目を集め、美術史に残る印象派という言葉さえをも作ったのです。

この印象派の画家たちは、決してサロンで入選できないような稚拙な技術しか持っていないわけではありませんでした。
事実、モネはこの展覧会以前に二度ほどサロンで入選を果たしています。
また、同じ印象派の仲間であったルノアールにもごく初期に、「サロン好み」の伝統的で神話を主題とした作品が残っています。
しかしながら彼らは、サロンに入選して名をあげ、仕事をもらって画家として生計を立てる……という従来のやり方に疑問を抱きます。
その疑問を形にすることに後押ししたのは、当時の科学技術の発達、絵の具の発達でした。
それまでの絵の具は、顔料という色を作る元となる鉱石などを自分ですり潰す→粉末状になった顔料を色別に分けて小皿に乗せる→小皿の顔料を絵の具用の油で溶いて練り合わせる・・・という大変手間のかかるものでした。
しかし、印象派の画家たちが台頭した時代から、チューブ入り絵の具という便利なものが生まれます。
これが、戸外での絵画制作を可能にしました。
戸外で制作すれば移ろいゆく色彩に目を奪われるのも自然な事だったのです。
絵を描くことが好きな人なら分かると思いますが、絵の具と言うものはパレットで混ぜれば混ぜるほど濁った色になってしまいます。当然、最後は黒に。
しかし明るい陽光に照らし出された風景や人物を切り取ろうとするならば、濁った色は避けたいところ。
そこで生み出されたのが、パレットで色を混ぜるのではなく、チューブから出したままの色をキャンバスの上で小さなタッチで近くに置くという事でした。例えば、黄色と赤を小さなタッチで近くに置いてゆくと、少し離れたところから見るとオレンジに見えます。
現代では「色彩分割」「筆触分割」と呼ばれるこの技法は、このように生み出されました。

第一回の印象派展ではモネ、ドガ、ルノアール、セザンヌなど、後の絵画史に残るそうそうたる名が連なっています。
その後印象派展は、少しずつメンバーを変えながら数年ごとに開かれ、従来の伝統に縛られない若い才能を世に送り出していきました。
しかし、その印象派展も8回目で終わりを告げます。
理由は最初は嘲笑の的であった主要メンバーたちが、それぞれに認められ忙しくなったこと。
また、それぞれのメンバーたちが自分の道を見出して行ったという事もありました。
血の通う人体を生き生きと描くことにこだわったルノアール。
形態にこだわったセザンヌ。
さらに激しい表現を求めたゴーギャン
色彩をさらに分割できると気付いたスーラ・・・

印象派と名付けられた画家たちの展覧会は、12年という短いものでした。
しかしながらこの印象派と言う名は、永遠に美術史に残り続ける事でしょう。

文:小椋 恵

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