ルネ・ラリックのここがすごい!
ガラスだけじゃない!独創的なジュエリーデザイナー「ルネ・ラリック」
ルネ・ラリックといえば、ガラス!繊細な香水瓶や花瓶に壺…。色鮮やかな作品を得意とするエミール・ガレとは好対照を成し、共に人気の高いガラス作家の一人です。
しかし、ラリックが実はジュエリーデザインも手掛けていたのはご存知でしょうか?彼、ガラスを手掛ける前はジュエリーデザイナーだったのです。ではどんな作品を作っていたのでしょうか?
それを知るには手っ取り早く鑑賞するに限ります。「箱根ラリック美術館」に多くの作品が所蔵されているのですが、優美で有機的な曲線に彩られたアール・ヌーヴォージュエリーは見ていて心が躍ります。
ジュエリーと言えば宝石がたくさんでキラキラしているというイメージを覆す、所謂モダン・ジュエリーの先駆けと言われる独創的なものを多くデザインしています。女性、動植物や昆虫といった自然の形態をそのままデザインに生かし、ジュエリーという小さなキャンバスに空間と動きを生み出し、宝石以外の素材を積極的に取り入れた…これだけでもラリックの凄さの一端がわかると思います。
例えば「ブローチ『パンジー』」の写実性ときたら、凄まじいものがありますよ。たった今、野原に咲いていた可憐な花を摘み取ってきたかのようなこの趣!「ブローチ『枯れ葉』」も凄いです。普通枯れ葉なんてジュエリーのモチーフとして選びませんよね?けれど、葉脈が浮いてくしゃりと丸まった葉の中心に石を配し、見事にジュエリーとして成立させてしまっている彼の発想は恐ろしいものがあります。「ハットピン『ケシ』」は2009年に国立新美術館で開催されたラリックの展覧会のチラシにもなっています。花をそのまま帽子に刺したようになるこのハットピン…素敵ですよね。
これらがデザインされた当時の婦人達は、少女が散歩道で摘んできた花を飾るが如く、その繊細なアクセサリーを身に着けたに違いありません。女性の心をがっちり掴みつつ、自然の美しい形を探求していったラリックのデザインは、今を生きる私たちの心をも捉えて離さないのです。
しかし、ラリックの魅力はそれだけではないのです。ちょっと変わった物を見に着けたいわ!というパリの貴婦人達の声に応えるかのような、独創的なものも作っています。例えば「胸飾り『蜻蛉(かげろう)の精』」。胸から上は女性の姿ですが、腕や下半身はなんと蜻蛉の形をしています。一見、遠くから見たら冴えた緑が美しい蜻蛉だと思うでしょう。でも近づいてみると、実は妖精だった、なんて心憎い演出です。色などはとても装飾的でありながら、女性や蜻蛉の造形にはとても忠実なので、なんだか不思議な感じもします。一体どんな服に飾ったらいいのやら!
皆さんは、どんな洋服にこれをつけてみたいですか?ラリックのデザインするジュエリーは、一緒に着る洋服までも想像して見てみると楽しさ倍増ですよ!
彼は1882年頃からフリーランスの宝飾デザイナーとして活動してきたのですが、実はカルティエにもデザインを提供していたくらいの売れっ子。ミュシャの作品に登場することで有名なサラ・ベルナールも顧客の一人というのですから、彼がいかに評価されていたかよくわかりますね。今まで述べてきた作品達を見れば、それも納得です。
しかし、知っての通りファッションの流行り廃りは激しいもの。シンプルな服が流行り出すと、一気にデコラティブなラリックのアクセサリーは売れなくなってしまいます。ラリックがガラス作品を作り出したのはその頃。大体1900年あたりと言われています。香水瓶からスタートしたのですが、繊細な香水瓶に香水を入れて売るというのも今では当たり前ですが、当時としては非常に革新的で、そちらもがっちりと顧客の心を捕えてあっという間に売れっ子に。そうして遂にはガラス作品の巨匠として君臨するまでになったというわけなのです。ラリックの、時勢を読む力は本当にすごいですね…。
優美で繊細なラリックのジュエリーの数々、機会があったら是非鑑賞してみてください。
文:神野戒
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