クライスラービル のここがすごい!
「アール・デコ」に彩られた都市
20世紀初頭、アメリカを中心に「アール・デコ」と呼ばれるデザインが大流行しました。
デコはデコレーションの略。直訳すれば「新しい装飾」と言ったところでしょうか。
19世紀末にヨーロッパで流行したアール・ヌーボー。
それは、非常に凝ったデザインであったために工業化での大量生産が出来ませんでした。
それに対してこのアール・デコは直線的な幾何学を多用。
それが、工業化による大量生産を可能にしました。
その大量生産化が、急速に都市化が進んだ当時のアメリカのニーズにぴったりだったのです。
半円形の装飾(日輪に似ているため、サンバーストと呼ばれています。)を繰り返し、そこに三角形の幾何学模様をやはり繰り返しています。(この繰り替えしが豪華で合理的という意味です。)
そしてこのサンバーストの先にある、尖った先端部。
このビルの全体像を見たときに、一番先に目に留まる部分ではないかと思います。
これは、当時のアメリカのオフィスビルが「高さ」を競っていたから。
少しでも高くするために取り付けられたものなのです。
他社よりも高く、より高く。
どれだけ高いビルが建てられるかがステータス。
このクライスラービルも建築時にはアメリカ一の高さを誇りました。
(最も、一年後にはエンスパイア・ステート・ビルに抜かれてしまいます。)
かつてのヨーロッパが大聖堂で高さを競ったように、近代のアメリカは商業ビルで高さを競います。
かつての大聖堂は信仰だけではなく、社会のコミュニティ広場の役割を果たしていました。
それと同じように、近代のアメリカでは商業ビルで行われる資本主義経済が広い意味でのコミュニティ広場となりました。
科学技術の進歩と共に歴史は変わります。
歴史の移り変わりと共に建築もまた。その舞台となる土地も。
しかし、その「中」にあるものは人類の歴史がある限り変わらないともいえるのかもしれません。
この当時、さらに無駄な装飾を排したエンスパイア・ステート・ビル(こちらもアール・デコ風です)と並び近代アメリカ都市の「カッコよさ」を彩るビルとなっています。
文:小椋 恵
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