エドワード・ホッパーのここがすごい!
特徴がないのが彼の絵の特徴
エドワード・ホッパーは1882年生まれのアメリカの画家です。彼を何派や、何画家とカテゴライズするのは非常に難しいです。彼はアメリカの街の風景を描きますが、風景画家でもなければ、そこに映り込んだ人々を中心にした人物画家でもありません。特徴がないのが彼の絵の特徴かもしれません。
ホッパーの代表作の一つである、『ナイトホークス』には彼の作風が顕著に出ています。この絵は、アメリカ(おそらくニューヨーク)の、深夜の飲食店の様子を店の外から描いています。深夜の倦怠感と静寂がありありと伝わってくるのですが、その熱の込められていないタッチは、まるで40年代のアメリカ社会を写した記録写真のようなのです。主人公がいるわけでもなく、描かれている人はモデルというよりは、「写り込んでしまった」という感じなのです。
しかしそれゆえに、私はこの絵から目が離せなくなりました。ずっと頭から離れない絵の一つです。ホッパーがホッパーの気持ちを込めずに一瞬を切り取り、描いているからこそ、そこにいる人々の生活、なぜこんな時間にそんな所にいるのか、あなた達はどんな関係なのか、この絵を見た人は想いを巡らせずにはいられなくなります。
ホッパーの面白いところは、自分の住んでいる街の風景を描いているのにも関わらず、その街や人への個人的な愛着が伝わってこないことです。ホッパーはまるで異邦人のような目で街を切り取ることができるのです。
そのため、私たちにどこか旅先で見た懐かしい風景を思い出させてくれるのです。是非、ホッパーの絵を見て時間旅行をしてみてはいかがでしょう。
文:まりあんぬ
明と暗を使い分け、静を表現する
ホッパーはアメリカンな絵にも関わらず、絵の中に明と暗、不安と安心を描き出す事に長けています。
彼のスタイルを決定づけた、代表的な「線路脇の家」を見てもわかるように、明と暗の描き方がクッキリとして、暗闇には不安感を、陽の光には安心感を感じる作風になっています。そして一つの作品の中にその世界観が必ず描かれているのです。
描き出す風景は、ほとんどが絵葉書にあるような美しい絵柄ではなく、アメリカの街角の本当に夕暮れの一角だったり、暗闇に安心感を与えている店の明かりだったりしますが、やはり中心は「明と暗」がテーマで、店の光の中にいる人たちも、一人一人に明と暗の人生を彷彿とさせる雰囲気が漂っています。
何気ない町の何気ない風景ばかりの絵柄ですが、絵柄の中には人間が一人居るごとに一人一人のドラマや、人生が垣間見えるほどの静けさが描かれているのです。そしてその人間の明や暗も、絵を見る者の想像を掻きててやまない何かがあるのです。
一枚の絵を見て、怖い物語を作れと言われても作る事が出来るし、楽しい物語を作れと言われても作る事が出来る。しかし、実は何事も無くただ日常の一風景だよ、と言われても納得のいく、見ていて飽きない、それがホッパーの作品です。
文:sepiatuki
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