フランソワ・ジェラールの作品紹介
プシュケとアモル
なんと美しく、かわいらしくみずみずしい、男女のキスの瞬間なのでしょう。
この男女、男性は愛の神・キューピッド(アモル)、女性は人間の娘・プシュケです。
人間の娘プシュケは、美の神・ヴィーナスも嫉妬するほどの美貌の持ち主でした。
ある夜、ヴィーナスは息子キューピッドを使いにやり、プシュケが醜い男に恋をするように仕向けます。
しかし、キューピッドは誤って金の矢で自分の胸を突いてしまい、人間の娘プシュケに恋をしてしまうのでした。
キューピッドに初めての接吻を受けるプシュケ、胸に手を置き、はっとしたような表情を浮かべています。
それもそのはず、プシュケにはキューピッドの姿が見えないのです。
キューピッドは左手をプシュケの肩に置き、右手をプシュケの右耳に触れるか触れないかの距離においています。
この仕草、頭をやさしくつつんでいるようで、キューピッドがプシュケを本当に大切に愛おしく思い、
宝物に触れるかのように接しているように見えませんか?
背景は青い空とのどかな田園風景。
官能的な場面と対比的であるようでいて、2人の美しさ、清らかさ、可憐さを際立たせているかのようにも思えます。
プシュケの頭上を舞っているのは、一匹の蝶。
蝶はギリシア語で同じく「プシュケ」、意味は魂であり、本作は、人間の魂と神の愛の結合を意味しているとされています。
作家フランソワ・ジェラールは、18世紀のフランス新古典主義を代表する作家のひとりです。
本作はジェラールの代表作ですが、発表した当時は、賛否両論を巻き起こしました。
プシュケの肌が陶器のようで人工的であること、世界観が甘すぎる、などが批判の主な理由です。
しかし次第に人々の賛同を得て、新古典主義の「プシュケとアモル」作品の先駆け的存在となっていくのです。
筆者はルーブル美術館で幾度か本作を鑑賞しました。
間近で見ると、プシュケがまとう布のひだ一枚一枚まで、繊細かつ丁寧に描かれているのが分かります。
プシュケを見つめるキューピッドの目の優しさ、プシュケの圧倒的な美しさ、2人の清らかさ愛らしさ……
一度見たら忘れられない、そして何度見ても時が経つのを忘れてしまう、大好きな作品です。
文:usako k
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