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ニコラ・プッサンの作品紹介
理想郷へのメッセージを込めるプッサン
二コラ・プッサンと言えば、フランス、ノルマンディー地方生まれの17世紀の画家として知られています。彼は、バロック時代生きた画家として、数々の名作を残しています。
そんな彼の作品の中で今回私が注目したいのは、彼が1638年に描いた、「アルカディアの牧人たち」という作品です。この絵は現在フランス、パリのルーヴル美術館に飾られている作品で、二コラ・プッサンの描いたこの作品の中では比較的若い作品となります。
この絵には、4人の人物が描かれており、皆違うポーズをとっています。落ち着いた雰囲気のこの絵には、いくつかのメッセージが込められているようです。
まず注目したいのは、この絵には古代文学に出てくる理想郷の中の世界が描かれているという点です。彼らは「アルカディア」という場所にいる牧人達であるために、現実の世界を描いたものではありません。絵の中の登場人物たちが身にまとっている衣の色は鮮やかで、特に手前に立っている女性はスポットライトが当たっているかのごとく美しく描かれています。
そんな彼らが囲んでいるのは石棺。そのうちの二人はこの石棺の「私はアルカディアにもいる」と言う意味のラテン語で書かれたメッセージを指さしています。そしてこの「私」というのが石棺が象徴している「死」。理想郷を追い求める人たち、しかしそこにも死はあるのだろう。
この絵は深いメッセージを絵の中に込めた二コラ・プッシンの興味深い作品となっています。
文:ラブリー
「四季」破壊と再生のアレゴリー
バロック絵画のフランス代表の一人でルーブル美術館にコレクションがそろっています。
絵画に寓意を持たせることが巧みだったプッサンの絵の中に「四季」と言う連作があります。「春/アダムとイブ」、「夏/ルツとボアズ」、「秋/カナンのブドウ(または約束の土地)」、「冬/ノアの方舟」、春夏秋冬を通して春の新しい芽吹きからノアの方舟の洪水までで一つの作品群になっています。バロック期に流行った「メメント・モリ(死を忘れることなかれ)」という当時の価値観が「冬」があることではっきりと表されていて、なおかつメメント・モリの「死があるからこそ今を楽しもう」という逆側面が「秋」にも見受けられます。
そしてこの連作にもう一つの意味をくわえたのが、ルーブル美術館です。プッサンの作品群はフランス絵画の回廊に展示されていますが、この四季の連作だけは回廊の分岐点になっている小さな小部屋に、ちょうど円になるようにぐるっと配置されています。もし回廊に春夏秋冬を並べただけなら、冬の洪水の破壊のシーンでこの連作は物語として終わってしまうところを、円にすることで、冬の次には再び春がやってくる。破壊の再生がやってくる、そんな意味が付加されているように見えます。そしてその春夏秋冬はニコラ・プッサンの生きた時代から変わらず連綿とこの時代まで巡り続けています。これはニコラ・プッサンも予測していなかったのではないでしょうか。粋な計らいをするルーブル美術館とプッサンの四季に拍手を送りたいです。
文:クロエ
プッサンの「人生の踊り」はどこか寂しさを感じる絵画です。
ニコラ・プッサンの「人生の踊り」はその明るいタイトルとは違い、見ていてどことなく虚しさを感じる絵画です。確かに4人の人物が楽しそうに踊ってはいるのですが、どこか悲しさを感じさせます。プッサンの高い画力がよりその悲しさを強く感じさせるように見えます。
「人生の踊り」の作者であるニコラ・プッサンは17世紀、バロック時代の画家です。フランスで生まれますがその人生の大半をローマですごしたと言われています。この作品は1635年に描かれ、現在はロンドンのウォレス・コレクションにあります。
この絵画は時間、そして人生について描いた作品です。踊っている人達は喜びや貧困の象徴だと言われています。そして左端にある石柱は過去と未来をあらわしています。これはローマ神話に出てくる二つの顔を持つヤヌス神です。石柱の横にいる子どもはシャボン玉で遊んでいます。このシャボン玉は人生の儚さを意味していると言われています。右側にいる老人は時を司る神サートゥルヌス、上では神々が永遠を示しています。
誰もが生と死の運命から逃れる事はできない、この絵はそんな虚しさを伝えているように見えます。ですが、私はそれ以上に儚いからこそ、人生はこんなにも美しいという事をこの絵画は伝えているように思います。それほどまでにこの絵画はどこまでも美しい作品です。
文:るるるるん
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